マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は、株式市場の乱高下に影響もあまり受けず上昇基調が続いています。東証REIT指数は、前回連載日(5月1日)の終値2月28日以来となる1,500ポイントを回復し14日まで同じ水準で推移しています。前回連載日以降に、ケネディクス・オフィス投資法人(証券コード8972)、阪急リート投資法人(証券コード8977)の増資及び新規上場(後述)が公表されています。増資や新規上場により投資口(株式に相当)が増加する中でJ-REIT価格は上昇基調となっていることから、投資家の需要が高い水準にあることが窺えます。
新規に上場する銘柄は、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(証券コード3298)です。東証への上場予定日は6月5日、それに先立ちブックビルディングは5月21日~5月27日、発行価格決定日は5月28日となっています。
スポンサーであるインベスコ・グループは米国を本拠地とし、20ヶ国以上で資産運用を行う独立系運用会社です。投資対象は、東京圏を中心とした大都市圏の大規模オフィスビルとし、上場時のポートフォリオは「恵比寿プライムスクエア」等のオフィスビル5棟、取得額は計786億円となっています。J-REITとしては初なる外国籍の資産運用会社である点など特徴をもった銘柄となっていますので、改めてこの投資法人については取り上げたいと思います。
さて今回は東京のオフィス賃貸市況の動向について記載して行きます。J-REITは、オフィス特化型の日本ビルファンド投資法人(証券コード8951)とジャパンリアルエステイト投資法人(証券コード8952)が時価総額上位2銘柄となっているだけではなく、他用途に投資する銘柄も含め他銘柄がこの2銘柄に価格動向に追随するというという特色があります。具体的には、この2銘柄の価格が上昇(利回りは低下)した場合、他銘柄の価格も同様の傾向を示す局面が多く存在します。従ってオフィス市況の動向が、J-REIT全体の価格動向を左右する要素とも言えるのです。
東京のオフィスビル賃貸市場は、リーマンショックとその前に計画された大規模物件の大量供給が2011年から2012年にかけて続いたことで空室率が大幅に上昇しました。東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の空室率は2011年末に9.0%まで悪化しました(図表)。同様に大規模オフィスビルの供給があった2003年にも空室率が大幅に上昇したことがありましたが、その後急速に回復し2005年末には賃料単価が反転する目安とされる空室率5%を切る状況になりました。
2014年4月末時点の空室率は、貸室面積が0.1%程度の増加に対して需要が0.8%増えたため2013年末と比較して0.7%改善し6.6%となっています。空室率は年率で2.1%程度(0.7%×3)改善していますので、この傾向が続いた場合には年末に5%を切る局面も考えられます。
現在の東証REIT指数1,500ポイント前後、分配金利回りで3.7%程度という水準は、ちょうど2005年当時と同じレベルです。J-REITの価格は2005年から2007年5月まで大幅に上昇しましたが、その背景には図表の通り空室率の大幅な改善がありました。従って空室率の改善傾向が続く場合には、J-REIT価格は上昇する可能性が高くなっています。
一方で、2005年以降とは異なり消費税増税の影響で空室率の改善傾向が続かないことも考えられます。その場合には、J-REIT価格が既にオフィス市況改善を一部織込んで形成されている可能性があるため下落に転じることが考えられます。従ってJ-REITの投資家としては、オフィス市況の動向に注意を払う必要が強くなっています。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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