第55回 ETFについて見過ごしがちな5つの常識 【ETF解体新書】

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第55回 ETFについて見過ごしがちな5つの常識 【ETF解体新書】

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。ETFは私たち投資家の視野を広げてくれる画期的なツールですが、その特性を正しく理解しておく必要があります。今日はETFについて見過ごしがちな5つの常識について解説します。

1.成行注文は恐い

投資信託では1日に1度しか価格が付きません。従って、同じ日に同一の投資信託を買えば、誰が買っても同じ値段になります。しかしETFは市場に上場する「銘柄」です。取引時間内に突発的なことが起こり、市場価格が急変することがあります。このようなリスクを考慮すると、ETFを売買する際は「成行」は避け、「指値」注文したほうが無難といえるでしょう。


2.同じ投資対象でも信託報酬が異なります

一般に、投資信託と比べて信託報酬が安いETFですが、同じ投資対象のETFでも、継続コストに違いがあります。たとえば、新興国株式に投資を行う「iシェアーズMSCIエマージング・マーケット ETF」(EEM)と「バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF」(VWO)を比べると、前者は信託報酬が0.67%、後者は0.15%となります。あるいは、金(ゴールド)ETFとして有名な「スパイダーゴールド・シェア」(GLD)は信託報酬が0.40%、一方、「i シェアーズゴールド・トラスト」(IAU)は0.25%です。


3.支払うコストは信託報酬だけではありません

ETFを売買する際は「売買委託手数料」がかかります。また、個別株と同様に売り気配、買い気配が示され、この差(スプレッド)が大きくなると、ETFを割高に購入するリスク、ETFを割安に売却するリスクが発生します。これは、ETFの正味価値である「理論価格」と「市場価格」の間にスプレッドが生じている場合も同様です。


4.広範な分散がされているとは限らない

ETFの醍醐味は低コストでダイナミックな銘柄分散が出来ることですが、すべてのETFがそうとは限りません。一例ですが、国別株式ETFである「マーケットベクトル・ベトナムETF」(VNM)の組み入れ企業はわずか27社です。しかも、上位5社で純資産額の33%近くを占めています。その他、特殊なセクターETFの中には構成銘柄が少なく、かつ組み入れ比率がいびつなETFもあります。


5.ETFはクローズされる恐れがある

2014年4月末現在、世界には5,000本を超えるETFが上場していますが、そのうちの60%以上が純資産額1億ドル未満のETFです。新たに設定されても純資産が集まらず、出来高も増えなければ、ビジネスとして赤字となり、上場廃止される恐れがあります。米国では2012年に169本のETFが上場する一方、94本のETFが上場廃止に追い込まれました(2013年は新規上場が157本、上場廃止が64本となっています)。上場廃止の憂き目に遭わないためには、純資産額が数百万ドルのようなETFは避けたほうが無難です。ETFマーケットの拡大が続く限り、「多産多死」の状況に変化はないでしょう。


コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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