第56回「ふたつのベトナム株式ETF」 【ETF解体新書】

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第56回「ふたつのベトナム株式ETF」 【ETF解体新書】

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。ひと口に東南アジア諸国と云っても、その経済状況は大きく違っています。アセアンの国々を4つの経済ステージで区分けすると、1.シンガポール、ブルネイ 2.マレーシア、タイ、3.インドネシア、フィリピン、4.ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーに分けられるでしょう。4つ目のステージの中で、ETFが存在するのはベトナムだけです。現在、マネックス証券では、香港上場の「db x トラッカーズ FTSEベトナムUCITS ETF」(03087)と、米国上場の「マーケット・ベクトル・ベトナムETF」(VNM)を取り扱っています。ベトナムの株式市場はまだ歴史が浅く、ホーチミン証券取引所が開設されたのは2000年のことです。まず、ドイツ銀行グループが運用を行う03087は、2008年にドイツとイギリスに上場し、その後、2009年7月に香港に上場を果たしました。当該ETFはFTSEベトナム指数との連動を目指します。年間経費率は0.85%。指数に組み入れられる銘柄数は21です。また、業種別の構成割合は、金融47.65%、工業・資本財 18.31%、一般消費財11.50%、原油・ガス10.33%と、金融が突出しています(3月31日現在)。指数の上位構成銘柄は、1.Masan Group15.75%、2.HOA PHAT 14.20%、3.Vincom 13.34%、4.PetroVietnam Drilling and Well Services 10.22%、5.HAGL 8.56%となっており、上位5社のみでおよそ62%を占めます(6月16日現在)。国の産業そのものが発展途上にあるため、業種分散、銘柄分散ともまだまだ十分とは云えません。しかしながら、経済発展とともに、指数に組み入れられる企業数は増加し、かつ、業種の多様化も進むことが予想されます。

一方、ヴァン・エック・グローバルが運用するVNMは、マーケット・ベクトル・ベトナム指数との連動を目指します(2009年米国市場に上場)。年間経費率は0.72%で、指数が組み入れる銘柄数は28となっています。当該指数はベトナムに上場する銘柄に加え、売上高の50%以上をベトナムで稼ぐ外国企業も組み入れます。国別の構成割合はベトナム68.7%、イギリス9.4%、タイ9.3%、マレーシア6.1%、インド5.8%、韓国0.9%となっています(5月31日現在)。また、VNMは現物保有型のETFですが、03087はシンセティック・レプリケーション型となっています。シンセティック・レプリケーションとは、株式のバスケットと金融デリバティブを組み合わせ、指数の複製を行う運用手法のことです。03087では、ファンド(ETF)がドイツ銀行とスワップ契約を結び、ファンドは投資家が払い込んだ現金を銀行に支払って、その一方で銀行は買い戻し代金と指数のリターンをファンドに対して保証します。ベトナムは長年慢性的な貿易赤字に悩まされてきましたが、2012年、13年と2年連続で貿易黒字となりました。インフレ率も6~7%程度で安定しています。また、ベトナム政府は、国内上場企業に対する外国人投資家の持株規制を緩和することを検討しています。ベトナムはフロンティア市場の中で唯一TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉に参加しており、TPPが妥結すれば、輸出競争力が高まることが期待されます。いずれにしても、ベトナム株式ETFへの投資には長期的な視点が不可欠であると云えるでしょう。


コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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