第55回 日本賃貸住宅投資法人について 【J-REIT投資の考え方】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第55回 日本賃貸住宅投資法人について 【J-REIT投資の考え方】

東証REIT指数は、前回の連載(7月17日)翌日から13営業日連続で1,600ポイントを超えて推移しています。リーマンショック後の最高値は、13年3月27日につけた1,700.91ポイントですが、その前後で乱高下していました。東証REIT指数が13年に連続して1,600ポイント超えを果たした最長期間は6営業日、年間でも僅か17日だけでした。つまりJ-REITの価格は、リーマンショック後の高値圏に入っていると見ることができるでしょう。

さて今回は、上記の通りJ-REIT価格上昇の中で出遅れ感がやや強い日本賃貸住宅投資法人(証券コード8986、以下JRH)について記載して行きます。JRHの利回りは、2013年の年間平均値が4.27%、2014年1月から7月までの平均値が4.93%となっているため乖離幅は0.66%となっています。大半の銘柄は、価格上昇に伴い利回りは低下していますが、JRHは乖離幅が0.5%を超える2銘柄(※1)のうちの一つとなっているのです。

JRHは、ニューヨーク証券取引所上場の運用会社大手オークツリー・キャピタル・グループを実質的なスポンサーとする住居特化型の銘柄です。08年9月に旧スポンサーの破綻を経て現スポンサーに変更となり、10年7月の合併により投資口を4分割しています。JRHのポートフォリオの特徴としては、東京23区内の物件保有比率が50%を切っていることです。住居系では大半の銘柄が東京23区内に60%以上の投資を行っているため、JRHは都心部での保有比率が低く、大阪、名古屋、福岡などの地方主要都市にも比較的多く投資を行っている銘柄と言えます。

JRHは、14年9月期(第17期)の1口当たり分配金(以下、分配金)を1,720円とする業績予想を公表しています。分配金の推移という面で見れば、直近2期の実績分配金は13年9月期1,471円、14年3月期1,617円となっていますので順調に増加している銘柄と言えるでしょう。また合併差益(負ののれん)残高も70億円程度あり、ポートフォリオ整備のために発生した売却損を充当する方針を示しているため、分配金の安定性が高い銘柄となっています。

このようにJRHは、業績面で見れば13年と比較して利回りが上昇(価格が下落)する要素が少ない銘柄と言えますので、その他の要因が影響したものと考えられます。図表1の通りJRHとJ-REIT全体との利回りの乖離幅は、13年11月から拡大しています。


20140807_JREIT_graph01.jpg


13年11月以降に価格に影響を与えた要因として、まず13年11月の増資が考えられます。この増資は、増資前の1口当たり出資額を上回るプレミアム増資であり、分配金も増加する予想を公表していました。従ってこの増資は、短期的には需給悪化により価格が下落しても比較的短期で収束する可能性が高いものであったと考えられます。

次ぎに13年12月にスポンサーが行った保有投資口の一部売却が影響したことが考えられます。JRHは前述の通り、スポンサー変更と合併を経ている銘柄です。その過程で資本増強を行う際にスポンサーに対して大規模な第三者割当増資を行いました。そのため、図表2の通り13年9月期末時点ではスポンサー保有比率(※2)が高い状態になっていました。

20140807_JREIT_graph02.jpg

その後13年12月にスポンサーは、JRHの投資口603,129口を保有する傘下の投資会社2社に全口売却させ、別の傘下の投資会社に492,929口を新たに保有させることにしました。スポンサーの保有口数は110,200口減少しただけとも言えますが、当初保有の2社は「益だし」したかたちになりました。このことが、JRHのスポンサーが外資系運用会社であることを際立たせ、将来的なスポンサーの撤退リスクをも他の投資家に高めたものと考えられます。つまりJRHは割安感が生じていましたが、国内機関投資家を中心として様子見の状態が続いていた可能性があるのです。

JRHの価格は、7月から漸く反転し6月までと比較すると割安感は薄れています。しかし分配金の安定性が高い銘柄であり、分配金利回りが4.5%(8月6日時点)と市場平均を1%以上上回っている点から投資妙味がある状態が続いているものと考えられます。


※1:2013年1月時点で上場後2期目の決算を迎えている33銘柄(2012年以降の上場銘柄は除外)で比較している。なお最も乖離幅が大きい銘柄はインヴィンシブル投資法人(証券コード8963)となっている。

※2:JRHの開示資料では「マスター会社」という表記を用いている。


コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧