マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。前号でご紹介した、米国初のETF「スパイダー S&P500 ETF」(SPY)は、1993年1月29日にアメリカン証券取引所に上場を果たします。初日の売買高は100万口を超え、上々の滑り出しでしたが、次の日の出来高は約48万口となり、2月11日までに1日の売買高は2万口程度にまで減少してしまいます。当時、ETFという新しいツールをどう位置付ければよいか、金融関係者にも分かっていなかったのでしょう。証券会社は「それは株じゃないよ」と云い、運用会社は「それは投信ではない」と呟きます。ファンドの販売会社は「販売手数料が入らないからうちには関係ないよ」と嘯く始末でした。
実は、ETF誕生の遠因は1987年10月19日に起こった「ブラックマンデー」に遡ります。この日、ダウ平均はたった1日で22.61%も下落し、史上2番目の下げ幅を記録したのです。このような暴落時に、プロの投資家は大量の売買を執行できるインフラを有していましたが、個人投資家にはなす術がありませんでした。特に投資信託の保有者はただ指をくわえて暴落の行方を見守るしかなかったのです。通常の投資信託は1日に一度しか値段(基準価額)が付きません。ブラックマンデーのような暴落時に、「今すぐ株式ファンドを解約したい」と注文を出しても、約定される価格はマーケットが閉じたあとに決まる「基準価額」でしかないのです。未曽有の暴落をきっかけに、市場が動いている最中に、機動的に売買ができる投資信託(ETF)のニーズが沸き起こったと考えてよいでしょう。
1993年にETFという新種の商品を発見した個人投資家は、自分たちのリズム、自分たちの手法でETFに触れ始めます。ちょうど時代は、有店舗型証券からオンライン証券へとシフトしつつありました。デイトレーダーと呼ばれる人たちが、安価な売買手数料を武器に、分かりやすい投資対象としてETFを売買し始めたのです。また、プロの投資家も短期的に自分たちのポジションを調整するためにETFを使い始めます。意外に思われるかもしれませんが、投資信託の運用会社も、キャッシュ部分の有効活用のためにETFを利用し始めていました。一例を挙げてみましょう。
ファンドの運用会社は、解約に備えて一定割合のキャッシュを保有しますが、この資金の短期運用にETFを充てていたのです。たとえば、上昇する可能性が高い日のマーケット・・。市場の上昇分を確保したい運用会社は朝、キャッシュ部分を用いて「市場平均」を買い、マーケットが閉じる前に手仕舞って夕方にはキャッシュに戻し、投資信託の解約に備えます。一連の行動がETFというツールなら可能になるわけです。株式市場に上場したETFは、当初は新種の銘柄として、主に短期で売買されることが多かったのですね。紆余曲折がありながらも、「スパイダー S&P500 ETF」(SPY)は1993年末には純資産残高が5億ドル程度に成長していました。ただ、2本目のETFが米国に登場するのは、それから1年以上のちの1995年3月のことだったのです。
コラム執筆:カン・チュンド
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