マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REITの価格は、市場全体としては足踏み状態になっています。東証REIT指数は、9月2日の取引時間中に1,650ポイントとなりましたが、終値ベースで1,650ポイントを超えていません。8月11日に東証REIT指数が1,600ポイントを超えてから、安定的にこの水準を維持していますが、1,650ポイント近くになると分配金利回りは3.5%を切ることになります。前回8月21日の連載(http://lounge.monex.co.jp/pro/special1/2014/08/21.html)でも記載した通り、当面は東証REIT指数1,650ポイントを目指した展開が続くことになりそうです。
さて今回は、日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283、以下NPR)が8月26日に公表した増資(以下、今回の増資)について記載して行きます。NPRのスポンサーは、世界的に物流施設の開発・運用を行っている外資系のプロロジス・グループです。NPRも同様に物流施設特化型の銘柄となっています。保有資産の特徴としては、複数企業の利用を前提としたマルチテナント型の物流施設がポートフォリオの中心となっています。従って大型物件が多く、今回の増資後でポートフォリオは4,000億円を超えることになりますが、保有物件の取得価格平均は1棟当たり140億円程度と物流施設系の銘柄では最大となっています。
J-REITの増資は、増資で取得する物件の収益が通期で寄与するようにするため決算期の翌月に実施する事例が多くなっています。一方でNPRの今回の増資は、5月/11月決算のNPRが9月に実施する、いわゆる「期中増資」となりました。そのため増資による取得物件の収益は6ヶ月決算のうち半分も寄与しないことになります。
NPRはこの影響を回避するため、減価償却費を分配金原資とする利益超過分配を増額することとしました。NPRは恒常的に利益超過分配金を行う方針を示し、上場後全ての決算期で実施していますが従来は減価償却費の30%程度を上限としていました。
今回の増資が期中増資となったことで2014年11月期の当期利益ベースでの1口当たり分配金(以下、分配金)が減少することになるため、一時的利益超過分配として減価償却費の40%を限度とする方針に変更し、分配金の減少を回避しています。具体的には、2014年11月期の分配金は3,700円と従前の業績予想と同額ですが、当期利益での分配金は3,233円から3,120円に減少する影響を利益超過分配金が477円から580円に増額することで実現しています。2014年11月期の減価償却費に占める利益超過分配の36.5%になりますが、2015年5月期には通常の水準である30%以下(28.5%)に戻すこととしています。
このように今回は期中増資となったため、利益超過分配金が変則的になっていますが通期で物件の収益が寄与する2015年5月の分配金が3,874円(うち利益超過分配金483円)と増加するだけでなく借入金比率の低下も実現するものとなっています。
NPRの総資産に対する借入金比率(以下LTV)は、今回の増資で上場後初めて40%を切る水準になります。現在の金融機関の融資姿勢では、借入金を活用しLTVを高めることで分配金を大幅に増加する手段もとることも可能です。しかしNPRは、投資家の需要も活発なこの時期には増資による資本(出資金)を多く集め、分配金の安定性を重視する姿勢を示したことになります。その理由は、投資家の需要が低くなり増資の実施が困難になった場合や一部テナントの退去により分配金が減少するような事態になった場合には、借入金により物件を取得する余地を大きくすることで対応が可能となるためです。この点でNPRの今回の増資は増資に応じる投資家だけではなく、既存投資家にとっても歓迎すべきものと考えられます。
一方で、分配金利回りは利益超過分配金を含む分配金水準でも3%を切る水準(9月3日時点)となっています。前述の通りNPRは、分配金の安定性や成長力にある銘柄と言えますがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用を決めた「MSCI Japanインデックス」の構成銘柄であることも価格高騰の要因と考えられます。従ってGPIFの投資動向によって今後は価格が乱高下する可能性が高まっている点には注意が必要と言えるでしょう。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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