第62回 追加金融緩和のデメリットについて 【J-REIT投資の考え方】

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第62回 追加金融緩和のデメリットについて 【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、順調な上昇局面が続いています。東証REIT指数は、11月10日からは安定して1,700ポイント台を維持し、14日には2008年1月9日以来となる1,750ポイント超えを果たしました。前回の連載(11月6日)で記載した通り、J-REIT市場は、需給面で死角が少ない状態となっていますので、価格上昇の動きはまだ続くものと考えられます。

また消費税の増税が先送りされたことも、J-REIT価格上昇の後押し材料となりそうです。7月から9月のGDP速報値が示す通り、日本の景気は見方によっては後退局面とも言える状況になっています。しかし、増税の先送りで景気の腰折れリスクはかなり低減されたと考えられるためです。

さて今回は、前回の連載で予告した通り、日銀の追加金融緩和(以下、追加緩和)がJ-REITに与える悪影響について記載して行きます。J-REIT価格は冒頭に記載した通り、ほぼ6年ぶりとなる価格まで順調に上昇していますが、分配金の増加は価格上昇に追いついていません。従って、投資家がこれからJ-REIT投資を行なう場合は低い水準の分配金利回りとなることが、最も分かり易いデメリットと言えるでしょう。

さらにJ-REIT投資を既に行っている投資家にも、追加緩和は1口当たり分配金の成長を阻害する要素を持っています。その理由として、追加緩和が不動産価格の高騰を導く可能性が高い点が挙げられます。

追加緩和は安定的な物価上昇が実現するまで、この政策を続けることを明言しています。また追加緩和により金融機関から借入金金利水準は、追加緩和前と比較して低下することになります。不動産価格の上昇を見込む短期転売型の不動産ファンドにとっては格好の材料が揃うことになるのです。

不動産ファンドは、J-REITより高い借入金比率で運営を行うため、調達金利の低下は好材料です。さらに転売を想定しているため、J-REITより短い借入金の調達期間となります。つまり不動産ファンドは、J-REITと比較して調達金利が高いというデメリットが解消できる状態になっているのです。

このような状態になると、J-REITは不動産取得競合で不動産ファンドに劣ることも多くなります。J-REITは、1口当たり出資額を大きく上回るプレミアム増資が可能な価格水準でも、物件取得が困難となることでその好機を生かせなくなるのです。

また不動産価格は、競合が重なることで高くなります。都市型商業施設やホテルなど賃料が明確な増加基調にある用途もありますが、J-REITが保有する代表的な用途では、まだ賃料は横ばいの水準です。このような状況では、J-REITは低い利回り(高い価格)で不動産を取得することになります。プレミアム増資を行っても不動産価格の上昇によって、1口当たり分配金の増加が実現できなくなるのです。

追加金融緩和の二点目のデメリットとして、新規上場銘柄の増加という点が挙げられます。J-REITの価格上昇によって低い利回りでも上場が可能という状況が長く続くためです。かつてJ-REIT市場では、価格が上昇過程を続けていた2005年から2006年に2年連続で10銘柄以上が上場するという時期がありました。

2004年12月に上場したニューシティ・レジデンス投資法人が破綻したことが象徴している通り、上場ラッシュとなった時期の銘柄の多くは図表の通りリーマンショック後に合併により消滅するか主要スポンサーの変更を経ています。このような銘柄に投資していた投資家の大半は、1口当たり分配金の大幅な減少という事態を経験することになったのです。

価格上昇期が長く続くことは、J-REITの投資家にとって歓迎すべきことですが、「粗製濫造」銘柄が登場する時期とも言えるのです。従って、投資家は今後上場してくる銘柄に対しては、既存銘柄以上に注意する必要があると考えられます。

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コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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