第63回 積水ハウス・リート投資法人について 【J-REIT投資の考え方】

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第63回 積水ハウス・リート投資法人について 【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、過熱感が強まっています。東証REIT指数は、11月25日に1,800ポイントを回復したばかりですが、12月1日には1,850ポイント超えを果たし3日まで連日年初来高値を更新しています。また11月28日には、2001年9月の市場開設来初めてとなる時価総額10兆円超えを果たしています。
日銀が追加金融緩和を行った前日である10月30日から12月3日までの上昇率は、日経平均13.1%に対して東証REIT指数は13.5%となっています。株式市場は円安による増益効果が期待できる企業が多く存在するため、円安が進行する中での株価上昇は当然とも言える動きです。しかしJ-REITは、為替動向が直接収益に影響を与えないという中で株式市場と同様の上昇を示していることになるため、冒頭に記載した過熱感がある状態と考えられるのです。

さて今回は12月3日に上場した積水ハウス・リート投資法人(証券コード3309、以下SHR)について記載していきます。SHRのスポンサーは名称が示す通り積水ハウス(証券コード1928)です。積水ハウスは、積水ハウス・SIレジデンシャル 投資法人(証券コード8973)の主要スポンサーであると同時に今年(14年)5月までオフィスを主体として投資するジャパンエクセレント投資法人(証券コード8987)のスポンサーでもありました。
 
SHRの投資方針の特徴は、分散を図表の通り80%以上:20%未満で行うという点が挙げられます。海外不動産の投資に関しては、イオンリート投資法人(証券コード3292)に続き上場時から投資を行う方針であることを示し、中心的なエリアはスポンサーの開発実績があるシンガポール・オーストラリア・アメリカとなっています。

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次ぎにSHRは、上場時ポートフォリオも特徴的です。上場時の資産規模は1,143億円と他銘柄の上場時と比較すると大型ですが、わずか3棟でポートフォリオが構成され実際に入居しているテナントも合計で6社です。このようにSHRのポートフォリオは、物件だけでなくテナントの分散効果も少ない状況です。
SHRは、ポートフォリオのウイークポイントを全ての物件で5年間は賃料変更が不可能な契約とすることで補っています。賃貸収益の減少リスクは上場時ポートフォリオでは回避し、安定性を重視したと見ることができます。また借入金550億円は全て長期借入金とし加重平均で6年を超える調達期間、さらに410億円を固定金利としています。日銀の金融緩和で短期・長期ともに当面金利が急上昇するリスクは低い環境ですが、SHRは財務面でも安定性を重視していることが窺えます。
 
上場日の価格は、公募価格の11万円を23%程度上回る135,000円となり好調なスタートとなりました。一方でSHRの1口当たり分配金は、通常の6ヶ月決算となる2015年10月期で2,201円となっています。従って、価格が147,000円まで上昇すると分配金利回りが3%を切る(2,201×2÷147,000=2.99%)こととなります。
SHRは、日銀が投資対象とするAA格(AA―、JCR)を上場時から取得していることやJ-REIT価格が当面上昇する可能性が高い点から、まだ価格上昇の余地はあるものと考えられます。しかし景気回復が順調に進み、オフィスビル単価の上昇が早い段階で実現した場合は、SHRの価格が他のオフィス系銘柄と比較すると上昇率で劣る可能性が考えられます。
その理由として前述の通り、上場時保有物件は賃料増加が5年間は期待できない契約になっているとも言えるためです。SHRは、今後物件取得を行っていくことでオフィスビル市況の改善を取り込めるようなポートフォリオに変化させることも可能ですが、ある程度の時間が必要です。従ってオフィス市況が2015年後半の早い段階で実現すると、賃貸収益増加期待が大きくなる他のオフィス系銘柄と比較して価格上昇力が劣る可能性が高くなります。このような点から考えると、SHRはオフィス市況が回復するとしても時間を要すると考える投資家向きの銘柄と言えるでしょう。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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