マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2015年は年初からJ-REITに対する投資家の需要が高いことを窺わせる展開が続いています。株式市場は、原油価格の急落に伴うリスクオフの動きによって大幅な騰落を繰り返す動きで2015年をスタートしました。一方で東証REIT指数は、14日時点で安定的に1,900ポイントを超える動きが続き、2,000ポイントを窺う展開になっています。
また1月6日には、ケネディクス商業リート投資法人(証券コード3453、以下KRR)が2月10日に上場することが公表されました。名称の通り商業施設を投資対象としますが、日常利用客を中心とした生活密着型の物件を取得することで特色を打ち出す方針です。なお、KRRについては、次回の連載(1月29日予定)で取り上げる予定です。
さて今回は前回の連載(12月18日)で記載した通り、2014年10月末に日銀が公表した追加金融緩和(QQE2)と消費税再増税の延期が、2015年のJ-REIT価格に与える影響について記載していきます。
QQE2のJ-REIT価格に与える効果については、11月6日に本連載の「日銀の追加金融緩和」で記載した通りになっています。日銀が投資対象とするAA格相当の銘柄だけでなく、投資家が利回りを求めて投資を行っているため、幅広い銘柄に価格上昇の恩恵が及んでいます。
この点は、J-REITの利回り動向を見ると明確になります。J-REITの時価総額を元にした加重平均ベースの利回りと全銘柄の単純平均の利回りの乖離幅(以下、利回りスプレッド)は、QQE2前の0.3%程度から半分以下の0.13%まで低下(図表、参照)しています。AA格の銘柄は時価総額が大きく利回りの低い銘柄が多いため、投資家は利回りを求め時価総額の小さい銘柄にまで触手を伸ばしJ-REIT価格が上昇を続けているのです。冒頭に記載した年初にJ-REIT価格が堅調な要因も、長期国債の利回り低下が影響しているものと考えられます。
さらに足許の経済状況が、QQE2によるJ-REIT価格への影響をより強めています。消費増税で2014年のGDPがマイナスになる可能性が高まっていることや原油安による物価の下落も加わっているため、日銀がさらなる金融緩和(QQE3)を行う環境が整ったと見る投資家も増えています。この背景には、日銀がQQE2の実施でインフレ目標に対し果断な措置を行うことを市場にしめしたことがあります。さらなる緩和を期待して、投資家はJ-REITを売りにくい状況に置かれているためJ-REIT価格の安定感が強くなっています。
次ぎに消費税増税が延期されたことで、J-REIT価格はさらに上昇する可能性を残しました。QQE3が実施されれば、J-REIT価格は一時的に大幅に上昇することとなりそうですが、現時点では一過性の値動きとなりそうです。
その理由として、J-REITは1口当たり分配金などのファンダメンタルズの改善が進んでいないことが挙げられます。前述の通りJ-REITの利回りスプレッドは縮小していますが、これは時価総額の大きい銘柄の利回りがあまり低下していないことも意味しています。例えば、J-REITの加重平均利回りは0.6%低下していますが、時価総額が最も大きい日本ビルファンド投資法人(証券コード8951、以下NBF)の利回りは2014年に0.2%しか低下していません。
しかし消費増税が延期されたことで、景気が回復しオフィス賃料増加が顕著になれば将来の分配金増加を期待した投資家によって価格が上昇する余地が生まれます。東証REIT指数が最高値を付けた2007年前半には、NBFの利回りは2%を切る水準まで価格が上昇していました。つまり、消費税増税の延期で2015年には2007年当時と同じようにオフィス市況の回復により将来的な分配金の増加を期待することが可能な状況がJ-REITに訪れる可能性が生じたと考えられるのです。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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