マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、年初の勢いを失い弱含む展開になっています。東証REIT指数は、1月19日には取引時間中ながら2,000ポイントを超える場面もありましたが、22日には1,950ポイントを割り込み28日に1,913.78ポイントまで下落しました。
下落の要因は、長期金利の上昇と考えられます。10年国債の利回りは1月19日に0.2%まで低下しましたが、22日には0.3%を超えるなど反転基調となっています。これは、日銀が1月20日から21日に開催した金融政策決定会合で2015年の物価上昇の見通しを前回会合時の1.7%から1.0%に大幅な引き下げたためです。日銀のさらなる金融緩和(QQE3)観測が弱まったことで、長期金利には上昇圧力がかかっているのです。
J-REIT価格は、年初から長期金利の低下を背景に上昇してきたため、利益確定売りも加わり下落基調に転じています。当面の価格動向は、長期金利に左右されることになりそうです。
さて今回は前回の連載(1月15日)で記載した通り、ケネディクス商業リート投資法人(証券コード3453、以下KRR)について記載していきます。
KRRのスポンサーは、投資法人の名称が示す通りケネディクス(東証1部、証券コード4321)です。ケネディクスはすでにオフィス系(ケネディクス・オフィス投資法人)、住居系( ケネディクス・レジデンシャル投資法人)銘柄の運用を行っています。従って、商業施設に特化して投資を行うKRRの上場によりケネディクスはJ-REITの主要投資用途を網羅したかたちになりました。
KRRは、投資方針上の特徴として生活密着型商業施設に重点投資することを目論見書に記載しています。他の商業施設系銘柄は、郊外型商業施設(イトーヨーカ堂やイオンなどのGMSがメインテナントの物件)や都市型商業施設(外資系ブランド店などメインテナントの都市中心部物件)を主要な投資対象としている点とKRRは異なるということです。
食品スーパーを核テナントとする物件が多いことは他銘柄との差異となっていますが、実質的には郊外型商業施設中心の銘柄という区分が可能と考えられます。一方で目論見書に記載されている通り、食品スーパーが実店舗のショールーミング化に強いという点はKRRの強みになりそうです。ショールーミング化とは、実店舗で商品を確認し購入はインターネットで行う(ネットショッピング)というものです。食品などは、配送料や配送までのタイムロスという点でネットショッピングに対抗できる商品となっているためです。従って上場後も食品スーパーを核テナントとする物件取得が継続できるとすれば、他の商業施設系銘柄との差別化は可能と考えられます。
またKRRは上場時に18物件を取得額808億円で取得する予定ですが、そのうち取得額が50億円を超える6物件は実際に全て複数テナントで構成され、入居しているテナントの平均数が43社となっています。つまり商業施設系銘柄の上場時ポートフォリオとしては、テナント分散効果が高いものとなっています。
ただし、賃料に占める上位10社の割合が上場時には45%と高い点だけでなく、商業施設系銘柄に投資する上で重要な判断材料となる賃料更改条件は大半が未開示になっています。投資家が、賃料減額リスクの発生時期を判断できない情報開示となっているのです。従って現時点での情報開示内容では、投資家がKRRに長期投資を行うことはリスクが高いものと考えられます。この点について資産運用会社は、決算説明会資料などで投資家に対して決算期ごとの総賃料に対する賃料更改割合などを示すことなどで改善していく必要がありそうです。
なおKRRは、明日(1月30日)までブックビルディング期間となっています。仮条件は22万円から23万円と設立時20万円に対して10%以上のプレミアムが付いた価格帯となっています。冒頭に記載した通り、J-REIT市場は、長期金利が上昇しているためやや地合が悪い状況ですが、既存49銘柄のうち予想分配金利回りが4%を超える銘柄は1銘柄だけとなっていますので、上場後の価格上昇が期待できそうです。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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