第69回 ヘルスケア&メディカル投資法人について 【J-REIT投資の考え方】

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第69回 ヘルスケア&メディカル投資法人について 【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は、回復基調を強めています。東証REIT指数は2月26日にほぼ1ヶ月ぶりに1,900ポイントを超える水準となりました。1月下旬から2月中旬にかけてJ-REIT価格の下落要因となっていた10年国債利回りの不安定な状況は、3月3日に2月18日以来となる0.4%を超える水準まで上昇したことが示す通り続いています。しかし、J-REIT価格への影響は1月下旬の時期とは異なり軽微になっています。

さて今回は、前回の連載(2月19日)で予告した通り、3月19日に上場予定のヘルスケア&メディカル投資法人(証券コード3455、以下HCM)について記載します。HCMは、投資法人の名称の通りシニア向け住宅を中心としたヘルスケア施設と病院・診療所や医療モールなどのメディカル(医療関連)施設に投資を行う銘柄となります。上場時の取得予定物件は、シニア向け住宅14棟で取得額は236億円の予定となっています。すでにヘルスケア銘柄としては、日本ヘルスケア投資法人(証券コード3308、以下NHR)が上場していますので、HCMはJ-REITで2銘柄目のヘルスケア銘柄となります。

HCMの特徴の一つとして、資産運用会社の構成が挙げられます。HCMの資産運用会社は、三井住友銀行グループ、シップヘルスケアホールディングス(以下、SHIP HC)、NECキャピタルソリューションがスポンサーとなりそれぞれ1/3ずつ出資して運用を行うことになります。特にSHIP HCはシニア向け住宅事業の他に医療施設の新設・移転・増改築に関するサービスなどメディカル関連の事業も行っています。

HCMの二つ目の特徴として、上場後も物件取得が充分に可能なことを示している点です。HCMは、NHRが132億円の規模で上場した点と比較すると約1.8倍の規模となりますが、目論見書(※1)によるとスポンサー関連の会社が保有する14物件に関してHCMは優先交渉権を確保している、としています。

目論見書には注記として取得予定物件ではなく今後取得できる保証はない、との記載はありますがシニア向け住宅は、取得競合が激しく取得が困難になる中で上場を延期する事例が生じるような状況です。従って物件取得の可能性を示している点は、投資家にとってプラス材料と考えられます。ただし、優先交渉権はありますが優先交渉価格の記載はありません。従って今後シニア向け住宅価格の高騰が続いた場合には、その時の価格で取得となるため、ポートフォリオの利回りより低い利回りで取得する可能性がある点は懸念材料と考えられます。

次ぎにヘルスケア銘柄に投資する上で重要な判断材料となる、シニア施設運用会社との契約内容ですが、最も契約終期が早い物件でも平成38年11月となっていることが示す通り長期契約としています。また契約期間中の賃料変更(更改)も大半の施設で5年ごととなっているため、最も契約更改が早い物件で平成28年11月に条件変更の時期となっています。この点から上場時保有資産に関しては、賃料減額リスクは低いものと考えられます。ただし、中途解約や賃料更改の条件が開示されていない「アズハイム光が丘」(取得額13億円)や1年前予告で契約解約可能なサービス付き高齢者向け住宅2物件(取得額31億円)については、賃料減額や解約リスクが短期的に露見する可能性があります。

なお先行して上場したNHRでは開示があった、施設売上に対する介護保険売上の比率に関する開示は、HCMでは行われていません。介護保険の自己負担比率の引き上げがあった場合には、入居者負担が増加するため長期的にHCMに投資する上では重要な指標と考えられます。この点にはついては、今後決算説明会資料などで開示が行われることが望まれます。

最後に上場後の価格ですが、NHRの事例を見る限り上昇する可能性が高いと考えられます。前述の通りHCMはヘルスケア銘柄としては2番目の上場となりますが、上場時の調達額が180億円程度と上場後に大幅に上昇したNHRと同様に少ない点やNHRが3%を切る分配金利回りまで価格が上昇しているためです。仮条件は、昨日(3月4日)公表され10万円から11万円となっています。
 
※2015年2月17日付けヘルスケア&メディカル投資法人「新投資口発行及び投資口売出届出目論見書」

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介


<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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