第72回「レバレッジ・インバース型ETFの注意点」ETF解体新書

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第72回「レバレッジ・インバース型ETFの注意点」ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。レバレッジ・インバース型ETFは、投資家のトレード意識を根底から変えたツールとして特筆されます。たとえば、ある銘柄を買い建てる、売り建てることは「信用取引」では普通に行われてきました。しかし、信用取引は別途口座を開設し、証拠金を積む必要があります。シンプルに「ある銘柄」を買うだけで売り建てることが出来たら・・、そんな願いを実現させたのが「日経インバース指数ETF」(1571)です。当該ETFは1日あたりの日経平均株価の変動率のマイナス1倍の値動きを目指します。たとえば日経平均が5%下がれば、当該ETFは5%上昇するというイメージです。また、レバレッジ型として「日経レバレッジ指数ETF」(1570)が挙げられます。当該ETFは、1日あたりの日経平均株価の変動率の2倍の値動きを目指します。たとえば日経平均が5%上がれば、当該ETFは10%上昇するというイメージです。


ただし、注意が必要なのは、1570、1571は日経平均株価の日々の変動率の2倍、もしくは-1倍になるように設計されている点です。日経平均株価の「前営業日」と「当日」という1日の変動率を基準とするため、2営業日以上の期間では「複利効果」が働き、原指数(この場合、日経平均株価)の変動率の2倍、もしくは-1倍から乖離していきます。具体例を挙げてみましょう。たとえば、日経平均株価が4月6日から7日にかけ、10%上昇したとします(100が110になるイメージです)。一方、日経レバレッジ指数ETF(1570)は100が120となります。4月7日から8日にかけても、日経平均は続けて10%上昇したとしましょう(すると、日経平均株価は110×1.1で121となります)。一方、1570は120×1.2で144となるイメージです。

もし、日経平均株価が100 → 121とプラス21%になったら、1570はプラス42%、すなわち142となるはずですが、実際には144になっています(これが「複利効果」による乖離です)。マーケットは不規則にアップダウンを繰り返しますから、市場が上昇と下落を繰り返せば繰り返すほど、また、レバレッジ・インバース型ETFの保有期間が長くなればなるほど、1570、1571の場合、原指数(日経平均株価)の変動率の2倍、もしくは-1倍から大きく乖離していくわけです。


レバレッジ・インバース型の先進国であるアメリカでは、この種のETFを長期保有した投資家が、自身のイメージするリターンと乖離が生じたため、運用会社に対して損害賠償を求める裁判を起こしていますが、原告の投資家側が敗訴しています。つまり、レバレッジ・インバース型ETFは短期のトレードの道具と割り切る必要があるのです。最後に、野村アセットマネジメントが運用する「日経レバレッジ指数ETF」の説明ページから引用しておきましょう。

http://www.nomura-am.co.jp/fund/funddetail.php?fundcd=141570


―日経平均レバレッジ・インデックスは、常に、前営業日に対する当営業日の当インデックスの騰落率が、日経平均株価の騰落率の2倍となるよう計算されます。しかしながら、2営業日以上離れた期間における日経平均レバレッジ・インデックスの騰落率は、一般に日経平均株価の2倍とはならず、計算上、差(ずれ)が不可避に生じます。(中略)一般に、日経平均株価の値動きが上昇・下降を繰り返した場合に、マイナスの方向に差(ずれ)が生じる可能性が高くなります。また、一般に、期間が長くなれば長くなるほど、その差(ずれ)が大きくなる傾向があります。―

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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