第1回「なぜ積立投資なのか」岡本和久の新時代の積立投資術「バリュー平均法」入門

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第1回「なぜ積立投資なのか」岡本和久の新時代の積立投資術「バリュー平均法」入門

日本では投機と投資が同じように考えられています。それは非常に不幸なことです。投機はコインの裏表を当てたり、サイコロの目を当てたりするようなもので、結果に法則性がない、ランダムな動きに賭けをします。結果に法則性がないので当然、結果をコントロールする術もありません。

投資は投機とは異なります。投資というのは経済活動に資金を投ずるのです。企業は事業を営むことで社会に付加価値を生み出します。その付加価値こそ投資のリターンの源泉です。もちろん、一社だと急に業績が落ち込んだり、場合によっては倒産したりすることもあるでしょう。しかし、十分に分散されたポートフォリオを保有していればすべてが倒産することはまずありません。それでもリーマン・ショックの後のようにある年には多くの企業が減益になったり、赤字になったりすることもあります。しかし、長期間、保有をしていれば山や谷を繰り返しつつ全体としての投資価値は増加していきます。ここに分散投資と長期投資がなぜ必要かという理由があります。

企業の価値は変動をしつつも長期で見れば増加をしていきます。株価はその価値の描くトレンド・ラインを中心としつつも、上にも下にも大きく変動を繰り返します。株価は影のようなものです。実体価値は欲望の側から光を当てると影は大きく見えます。また、恐怖の側から光を当てると影は小さくなります。そして、投資家の心理は常に欲望と恐怖の間を行ったり来たりしています。当然、影である株価も大きく変動します。

コントロールできることとできないこと

株価の動きに惑わされない投資を行うためにはコントロールできることとコントロールできないことをはっきり見分けることが必要です。アメリカの自由主義神学者、ラインホルド・ニーバーは以下のような言葉を残しています。

「神よ、私が変えることのできないことを受け入れる冷静さを、変えることのできることを変える勇気を、そして、それらの違いを判断できる知恵を与えたまえ」

投資にもこの言葉は当てはまります。「変えることができる」ことというのはコントロールできるということです。投資で成功するためには、コントロールできることをしっかりコントロールすることが必要です。一方、コントロールできないことの代表はリターンです。コントロールできることをコントロールした結果として生まれるのがコントロールできないこと、つまり、リターンです。コントロールできることには以下のような項目を上げることができます。

■ 株式と債券の間のアロケーション
■ 分散投資によるリスク削減
■ 支出を極力抑えるコスト削減

自分の投資ニーズに合わせてこれらをコントロールすれば自然に目的とするリターンは与えられるものです。

このうち分散投資には二つの側面があります。一つは銘柄分散です。そしてもう一つが売買のタイミングを分散する時間分散です。ピンポイントで上がる銘柄はそう簡単にわかるものではありません。同じようにピンポイントで売買タイミングもわかるものではありません。

なぜ積立投資なのか

就業中の方が退職後のために資産を形成しようとする場合には必然的に買付タイミングを時間分散することになるでしょう。最初からまとまった大きな資金を持っている人は少なく、毎月の給料の一部を将来のために投資していくのが普通だからです。その場合、いくつかの買い付け方法があります。例えば、毎月、給料の一定額をプールしておき、株式市場が大幅安をしたときにその資金で買いつけるということも考えられます。

しかし、これは頭で考えるほど簡単なことではないのです。大幅安といってもいくら下がったら大幅安かという基準はなかなかわかりません。日経平均が300円安をしたので「今だ!」と思って買いを入れてもその翌日にさらに500円安するということだってないとは言えません。また、大幅安をしたのを見て、翌日、買いを入れたら急反発したということもあります。要するに短期的な株価はいくら一生懸命に眺めていても持続的に当て続けることはできないのです。うまく当たったとしてもそれは「運が良かった」のだと考えておくべきです。

それゆえに、一定の投資プロセスを事前に決めておき、それに従って投資をしていくというフォーミュラ投資が有効なのです。例えば、毎月、一定の株数を買うというのも一つの方法です。また、特定のテクニカル指標がある数値になったら買うなどということも考えられます。

その中でも多くの方が行っているのがドルコスト平均法です。毎月、決まった日に自動引き落としで一定金額を買うという方法です。これは非常に優れた方法ですし、特に初心の方にはお勧めです。一定金額を買うということは価格が安くなったときには口数をたくさん買えます。価格が上昇すれば買える口数は減ります。これをずっと続けていくのですから自然にコストの安い投資のかたまりがつくれることになります。普通、金融機関が自動的に買い付けてくれるので手間もかかりません。ほったらかしにしておけば自然に投資を続けることができます。

ドルコスト平均法を続けて次第に投資に慣れてきたらこのコラムでこれから紹介するバリュー平均法を採用してみるのも面白いと思います。相場展開によって絶対とは言えませんが概してドルコスト平均法よりは低コストで積み立てることができます。ドルコスト平均法ではせっかく積み立ててもいざ、その資金を使おうというときに相場が低迷していれば必要額を確保できない可能性があります。バリュー平均法ではルール通りに投資をしていれば必要資金を手にすることができます。次回以降、この手法について解説をしていきます。

なにを買うべきなのか

スポットで買うにしても、ドルコスト平均法であっても、バリュー平均法であっても、もっとも重要なのは何を買うかということです。つまり、価値が上昇を続ける投資対象を使って積み立てることが必要なのです。私は退職後のために資産形成の目的は「購買力の維持+アルファ」だと考えています。つまり、物価の上昇に負けないで、少しそれを上回るぐらいのリターンを獲得したいということです。

最も重要な課題はインフレに負けないということです。株式を保有するということはその企業のオーナーとなることです。オーナーとなるということはその企業の利益の配分に参加できるということです。ある企業が値上げをしてそこにインフレ利得が発生すれば株主はその利益の配分を受けることができます。

今日、我々の生活は世界中の企業が提供する財やサービスによって成り立っています。ですから、購買力を維持するためには世界中の企業の株式を保有しておけば良いのです。さらに、世界経済はこれからも趨勢的には成長していくでしょう。ですから、物価上昇を上回る実質成長のメリットを受けることもできます。

つまり、どのような積立投資をするにしてもその対象は全世界の主要な企業を保有するということです。日本、日本以外の先進国、新興国、これらすべてに投資をする一つまたは2~3のインデックス投信を組み合わせて、時間分散を図りながら買い付けて行けばいいのです。では、次回からバリュー平均法についてお話を進めていきましょう。

岡本 和久
I-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社代表取締役社長
クラブ・インベストライフ主宰
投資教育家& ファイナンシャル・ヒーラー
著書に「金遣いの王道」(林望氏との共著、日経プレミアシリーズ)、「インフレに負けない!資産アップトレーニング」(日本経済新聞出版社)、「確定拠出年金 最良の運用術」(日本実業出版社)など多数
http://www.i-owa.com/

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