マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、4月前半に続いた上昇基調からボックス圏での推移に戻っています。東証REIT指数は、前回連載日の4月16日に4月高値となった1,913ポイントまで上昇しましたが、その後反落し30日終値は1,876ポイントとなりました。
J-REIT価格に対する影響が強い10年国債利回りは、3月末の0.40%から4月24日には2月2日以来となる0.3%を割り込む水準となり4月は安定的な低下傾向を示していました。10年国債利回りが安定的な低下傾向を示した時期は、13年10月末から14年1月中旬にかけて以来です。しかし、J-REIT価格は前述の通り16日時点が4月の最高値となっていますので、10年国債の利回り低下はJ-REIT価格の上昇(利回りの低下)に繋がらなかったことになります。
さて今回は、4月17日に第14期(2015年2月期)決算を公表した大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下DHR)について記載して行きます。DHRは、物流施設を主体に商業施設にも投資を行う複合型の銘柄です。
DHRは、3月3日に上場後2回目となる増資(以下、今回の増資)を公表し、物流施設7物件を484億円で取得します(※1)。ポートフォリオの規模は当期(第15期、2015年8月期)末に1,960億円となり、上場期となった第10期(2013年2月期)から800億円を超える増加となりました。増資での取得物流施設は、既存ポートフォリオと同様に全てテナント仕様で建築したBTS型(※2)となっています。ポートフォリオの拡大に伴い投資法人の基盤が整備できたとしてDHRは、第15期から継続的な成長によりポートフォリオの規模4,000億円を目指す「第2ステージ」に移行するとしています。
また、巡航ベースの目標分配金は、上場直後の1口当たり7,215円から第2ステージには8,400円と16%以上も増加しています。DHRが4月17日に公表した第16期(2016年2月期)予想分配金は8,800円としていますので目標分配金8,400円は減少しているように見えます。しかし、第16期の分配金が高くなっている理由は、今回の増資で取得した物件の固定資産・都市計画税が第16期には費用化されていないためです。このように税金や増資に伴う費用及び物件売却損益の影響を除外した分配金のことをJ-REITでは巡航分配金と表現する銘柄が多くなっています。
DHRの外部成長は、取得競合が激しい物流施設に関してはスポンサーの大和ハウス工業が物流施設の開発を進めているため(※2)懸念材料が少ないと考えられます。ただし、物流施設価格高騰の影響を受けるため、DHRが巡航分配金の増加傾向を続けるためには、今後も1口当たり出資額を上回るプレミアム増資が必要な状況が続いています。
なお大和ハウス工業は、非上場型の私募REITの組成を進めていますが、このREITはユニクロを展開するファーストリテイリング向けの物流施設開発のために設立されるとしているためDHRの外部成長への影響は軽微です。
また今回の増資により物件取得額に対する借入金比率は、第14期末の52.5%から50%まで低下する見込みです。DHRは増資時にはスポンサーから物流施設を取得し、増資により低下した借入金比率を利用して商業施設を取得していますので、第16期の予想分配金は物件取得による増加も期待できそうです。
※1:7物件のうち6物件414億円は4月1日に取得済、残る1物件は6月1日取得予定。
※2:DHRのポートフォリオの特徴やスポンサーの物流施設開発状況については、本連載の第45回(2014年3月6日)参照。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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