マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。ヘッジ(hedge)とは、本来「避ける」という意味です。市場が下落したときに資産の目減りを避ける、ということから転じて、ヘッジファンドの運用は市場の値動きに関わらず、絶対的な収益を求める投資手法として知られています。実際、ヘッジファンドには、ロング・ショート、グローバルマクロ、マーケットニュートラル、イベントドリブン、裁定取引など、さまざまな投資戦略が存在します。ロング・ショートとは、ロング(買い持ち)とショート(売り持ち)を併用する投資手法です。また、買い持ちと売り持ちを等しく保つことでマーケットニュートラルという戦略になります。
あるいは、グローバル・マクロでは、収益の機会を世界のさまざまな市場に求め、経済動向の予測とともに、一気呵成にポジションを取ります。イベント・ドリブンとは、企業の合併・吸収、倒産、訴訟の発生など、突発的に起こる変化・イベントに着目して投資を行う手法です。そして裁定取引(アービトレイジ)は、同一資産の市場間の「価格差」を利用して収益を上げる方法です。通常、裁定取引の利幅はごくわずかであるため、レバレッジをかけて取引を行うことが多いです。
ところで、今述べたような戦略を個人の投資家が利用するのは簡単ではありません。米国のETF運用会社IndexIQでは、複数のETFを組み合わせて、ヘッジファンドの運用成果と同等のリターンを目指す手法を取り入れています。同社は「IQ Hedge Multi-Strategy指数」を組成し、同指数との連動を目指す「IQ Hedge Multi-Strategy Tracker ETF」(QAI)を運用しています(前回ご紹介した「ファンド・オブ・ファンズ形式のETF」となります)。当該ETFは2009年3月に運用をスタートしており、純資産残高は約10億ドル(およそ1200億円)、直近3カ月の1日あたりの出来高は約214,000口となっています。以下、運用レポート(Fact Sheet)となります。
http://www.nylinvestments.com/polos/MEQAI05-041553676.pdf
上記運用レポートを見ると、当該ETFのボラティリティが小さいことが分かります。また、「IQ Hedge Multi-Strategy指数」のS&P 500に対するベータ値は0.30であり、株式市場との感応度も低いことが確認できます。当ETFはヘッジ型の運用戦略と同等のリターンを目指しますが、実際のヘッジファンドと異なり運用の中身(ポートフォリオ)が開示されています。同運用レポートによると、当該ETFに組み入れられるETF群のうち、ポジション別ではロング(買い持ち)が95.43%、ショート(売り持ち)が18.86%となっています(3月31日現在)。実際のヘッジファンドと違い、毎日売買を行える流動性も魅力です。また、当該ETFの年間経費率は0.91%であり、ヘッジファンドを保有するより随分コストが低くなっています。このようなタイプのETFを日本のオンライン証券会社でもぜひ取り扱っていただきたいと思います。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表 http://www.sinyo-fp.com/
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。
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