マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、好調な株式市場とは異なりボックス圏での推移が続いています。5月20日時点で東証REIT指数の年初来騰落率は2%弱の下落ですが、日経平均株価は15%以上の上昇になっています。
景気回復期にJ-REIT価格の上昇率が株式市場に劣後することは当然とも言えるものです。ただし、株式市場の価格上昇要因が、国内の景気回復に拠るものではない場合、J-REIT価格が上昇に転じるには日銀の第三弾となる金融緩和が必要となりそうです。
なお、J-REIT価格が停滞する要因としては、長期金利の乱高下に加え2015年は各銘柄の増資が高い水準で続き需給が悪化していることがあると考えられます。この点については次回の連載(6月4日)で記載する予定です。
さて今回は、4月8日に第21期(2015年2月期)の決算を公表した福岡リート投資法人(証券コード8968、以下「本投資法人」)について記載していきます。本投資法人は、商業施設を中心に様々な用途に投資する総合型です。
総合型銘柄は、投資比率の構成で見るとオフィス中心の銘柄が多くなっています。商業施設の比率が高い総合型銘柄は阪急リート投資法人(証券コード8977)やアクティビア・プロパティーズ投資法人(証券コード3279)が挙げられますが、本投資法人だけが商業施設の投資比率が60%弱と唯一50%を超えています。
また本投資法人の特色として、J-REITで唯一の九州地域特化型銘柄となっている点が挙げられます。MIDリート投資法人が投資方針を変更することになったため、首都圏以外の地域を主要投資対象とする銘柄は、本投資法人と阪急リート投資法人の2銘柄だけとなります。
本投資法人は、投資地域が首都圏以外であり投資用途が商業施設中心という収益の安定性を維持することが難しい銘柄のように見えますが、その点の対策を充分に行っています。まず投資地域に関しては、スポンサーはメインとなる福岡地所に加え九州電力などの九州地盤の大企業が加わったかたちになっています。オール九州とも言えるスポンサー構成とすることで地方では欠かせない需要が強い地点を選別するというピンポイントの物件取得が可能となっています。
次ぎに投資用途については、商業施設は都市部以外の郊外型商業施設に関しては、長期契約とするだけなく契約期間内の賃料更改を禁止することで収益の安定性を高めています。また旗艦物件であるキャナルシティ博多は、ポートフォリオ1,800億円弱のうち33%程度を占めていますが、多数のテナントで構成することで収益の安定化を図っています。さらにキャナルシティ博多を含め3物件で売上歩合賃料を導入していますので、景気回復による賃料収入の増加も期待できそうです。変動賃料が賃料全体に占める割合は、第21期時点で10%以下ですが、福岡空港が市街地に近いことに加え福岡港に寄港するクルーズ船による外国人観光客も増加しているため、いわゆるインバウンド消費の取り込みも充分可能となっています。
このような収益の安定性の高さは、分配金の推移でも明確になっています。図表は上場後2期目からの1口当たり分配金の推移を示していますが常に3,200円(本投資法人は投資口を2014年8月期から5分割していますので分割前換算で16,000円)以上となっています。
また最も注目すべき点は、借入金比率の低下と分配金の増加を両立させていることです。本投資法人の借入金比率は、2016年2月期に2008年2月期以来となる40%以下となる予定です。これは本投資法人が4月に増資を行ない117億円の調達を行う一方で増資に伴う物件取得額を52億円程度としたためです。つまり物件取得額を上回る増資による資金調達としました。
本投資法人は、堅調な投資口価格を生かしてプレミアム増資(増資前の1口当たり出資額を上回る価格で行う増資)を行ない、安定的な財務基盤を得たことになります。増資による需給悪化もあり価格はやや軟調に推移していますが、借入金による物件取得の余地も大幅に拡大していますので分配金のさらなる増加も期待できそうです。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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