第76回 サムティ・レジデンシャル投資法人の特徴と投資上の留意点について 【J-REIT投資の考え方】

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第76回 サムティ・レジデンシャル投資法人の特徴と投資上の留意点について 【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は、軟調な展開になっています。東証REIT指数は、6月4日から18日まで10営業日連続で1,850ポイントを割り込んで推移しています。15年の最長期間は、3月9日から19日までの9営業日となっていましたので、低迷が長期化していることになります。

さて今回は6月30日上場予定のサムティ・レジデンシャル投資法人(証券コード3459、以下SRI)について記載して行きます。SRIのスポンサーは大阪に本社を置き不動産業を行うサムティ(JASDAQ3244)社です。SRIの投資用途は、住居を中心にホテルやシニア施設にも投資を行う方針ですが、上場時点では住居特化型です。住居中心の銘柄としては10銘柄目となりますが、SRIは主要投資地域を地方都市中心とすることで特徴を打ち出しています。

具体的には、SRIは札幌市、仙台市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市を主要地方都市とし50%以上の投資を行う方針です。また主要地方都市以外にも20%以下の投資を行う一方で首都圏への投資を30%程度としています。
SRIの上場時ポートフォリオを他の住居系9銘柄と比較すると図表1の通り、首都圏の比率が極めて低いことが明確になります。SRIの都心23区内の投資比率は僅か8%程度ですが、他の銘柄ではスターツプロシード投資法人(証券コード8979)と日本賃貸住宅投資法人(証券コード8986)だけが44%程度と50%を切る水準になっています。なお、地方都市中心ですが1棟当たりの平均取得額は15億円と他銘柄の平均値を同様の水準となっています。地方中心のポートフォリオとしては比較的大型の物件中心ということもできそうです。
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また、SRIが地方都市中心の投資方針を持つことに付帯して、他住居系銘柄では行っていない利益超過分配を行う方針を示しています。利益超過分配とは会計上の費用である減価償却費の一部を分配金として投資家に還元するものです。現在のJ-REIT市場では、物流特化型銘柄のうちGLP投資法人(証券コード3281)と日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283)の2銘柄だけが利益超過分配を毎期行っています。

SRIが利益超過分配を行う理由は、物流施設と同様に地方物件中心のポートフォリオに伴い物件投資額に対する減価償却費の割合が高くなるためです。SRIは上場期となる第1期及び第2期に減価償却費の35%程度を利益超過分配として投資家に還元する方針です。また利益超過分配に関しては、ポートフォリオに全体で含み損失が発生した場合(※1)には、行わないなど一定の歯止めを掛けています。

このような特徴を持つSRIに投資を行う上で短期的に最も留意が必要な点は、物件価格が高騰している時期に上場する銘柄という点が挙げられます。図表2の通り、SRIの上場時ポートフォリオの利回り(※2)は地方都市中心ですが鑑定ベースで5.6%と首都圏中心の他銘柄に対してアドバンテージはありません。SRIの上場時目論見書では、地方主要都市の世帯数増加率が東京23区と同傾向であるなど、地方主要都市には安定した賃貸需要が存在すること示していますが、投資にあたっては物件利回りの優位性を持ったポートフォリオではないという認識を持つことが重要になります。
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また住居系銘柄としては唯一、利益超過分配を行う銘柄となりますので他銘柄との比較を行う場合は、利益超過分配金を除外したベースでの分配金利回りを計算して行うことも必要となりそうです。利益超過分配は文字通り、利益の配当ではなく投資家に対する資本の払戻しにあたるためです。


※1:利益超過分配を実施しない前提となる含み損失の発生に関しては、簿価のうち取得時の付帯費用相当額を除外して算出し、さらに資本的支出積立額を加算して判断するとしている。

※2:NOI利回り(【賃貸事業利益+減価償却費】÷取得額)を指す。動向として記載する予定です。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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