第78回 2015年上半期の投資家売買動向 【J-REIT投資の考え方】

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第78回 2015年上半期の投資家売買動向 【J-REIT投資の考え方】

15年下半期(7月-12月)のスタートをJ-REIT価格は、急落というかたちでスタートすることになりました。東証REIT指数は前回の連載日(7月2日)にあっさり1,800ポイントを割り込むと「底割れ」とも言える展開となり、10日には1,650ポイントを下回る水準まで下落し、6月末から7月10日までの東証REIT指数の下落率は8%を超えるものとなっています。

さて今回は、先日J-REIT市場の6月における部門別売買動向が公表されましたので、15年上半期の投資家売買動向について記載していきます。上半期の売買動向を把握することは、前述の7月上旬におけるJ-REIT価格急落の要因も理解しやすくなると考えられます。
上半期の売買動向の特徴として、まず金融機関(日銀の買入れ額除外、以下同様)の大幅な買越しが挙げられます。金融機関は上半期に月平均216億円の買越しを行いました。この金額のまま15年下半期も推移すると14年の月平均155億円の買越しを超え、過去最高の買越しになります。
この点から1月以降の10年国債利回りの乱高下は、金融機関の買越し姿勢に変化を与えていないと考えてよさそうです。日銀が14年10月から実施している第二弾の金融緩和により、金融機関が国債市場から事実上閉め出されている状態が続いているためです。
次の特徴として、外国人投資家の大幅な売り越しが挙げられます。上半期に外国人投資家は月平均で263億円の売り越しを行いました。特に6月は500億円を超える大幅な売り越し(図表、参照)を行なっています。



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外国人投資家は、14年11月には500億円を超える買越しを行うなど短期的に差引き売買金額が変動しやすい投資主体ですが、500億円を超える売り越し額は、J-REIT市場開設以来最大の金額となりました。外国人投資家の売り越しは、4月から軟調な展開が続いていたアメリカREIT市場が6月以降に下げ幅を拡大させていたことが要因の一つと考えられます。
このように、ともに過去最大となる金融機関の買越しと外国人投資家の売り越しが錯綜する中で、価格安定に大きな役割を果たしていた投資主体がJ-REITを投資対象とする投資信託(以下、投資信託)でした。投資信託の15年の月平均買越し額は246億円となっています。この金額は、過去最大だった13年の353億円には及びませんが14年の89億円と比較すると大幅な回復を示しています。
従って、6月下旬から深刻化したギリシャの債務問題に加え、7月に中国株式市場が急落したことで、投資信託のJ-REITに対する買越し姿勢が変化した可能性が指摘できます。また東証REIT指数は、14年11月下旬から1,800ポイントを上回って推移していましたので、大幅な買越し主体であった金融機関は含み損失を抱えることになりました。金融機関は様子見とならざるを得ない状況になっていたのです。

さらに東証REIT指数は14年10月まで1,600ポイント台での推移が続いていましたが月末に日銀が追加金融緩和を公表してから11月25日には1,800ポイント台まで急騰しました。東証REIT指数は、1,700ポイントから1,800ポイントの間は実質的に「空白地帯」になっていましたので、7月上旬の下げ幅が大きくなったものと考えられます。
東証REIT指数は、7月10日を底として反発し14日には1,700ポイント台を回復しました。しかし、J-REIT価格の急落要因となった前述のギリシャ債務問題や中国株式市場及びアメリカREIT市場の動向などは不透明感が強いため、短期的には懸念材料が残っている状態です。
一方で、需給だけで変動してきたJ-REIT価格が業績という面で「買い」が入る可能性が高くなってきています。これは、オフィス賃貸市況の回復が明確になってきているためです。この点についてはあらためて記載したいと考えています。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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