マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、安定的に推移しています。東証REIT指数は8月の初旬に急速に回復し1,800ポイントに近づく局面もありましたが、10日から19日までは1,750ポイント前後で推移しています。
価格の回復力が遅いという見方もできますが、東証REIT指数で1,700ポイント台の取引期間が長くなることは、価格安定に寄与すると考えられます。7月初旬の急落は、海外市場が混乱したことだけではなく、日銀が14年10月末に行った追加金融緩和によってその後1,700ポイント台の取引が少ない中で急騰したためと考えられるためです。
さて今回と次回は、6月4日の連載で予告した野村不動産系3銘柄合併による投資家のメリット・デメリットについて記載して行きます。3銘柄とは、具体的には野村不動産が100%出資する資産運用会社が全て運用を行っているオフィス投資の野村不動産オフィスファンド投資法人(証券コード8959、以下NOF)、賃貸住宅投資の野村不動産レジデンシャル投資法人(証券コード3240、以下NRF)、物流施設・商業施設投資の野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3285、以下NMF)のことです。
3銘柄ともに7月に行った投資主総会により合併が承認されましたので10月に新設合併し、野村不動産マスターファンド投資法人(新設合併のため証券コード未定、以下「新NMF」)として新たなスタートを切ることになります。この合併は、J-REIT市場で初めてとなる「のれん」が発生するものとなっていますが、「のれん」や「のれん償却」など合併の概略ついては6月4日の連載に記載していますので、関心のある方はそちらを参照ください。
新NMFは、合併により物件取得額が7,800億円弱、出資総額(株式会社の資本金に相当)が4,450億円強(※1)となります。また合併後にオフィス3棟、賃貸住宅2棟、商業施設2棟の合計7棟を231億円で取得する予定となっていますので、物件取得額は8,000億円を超える規模となります。物件取得額が8,000億円を超える銘柄は現時点では3銘柄しかなく、第4位のユナイテッド・アーバン投資法人(証券コード8960)の取得額は5,300億円強ですので、新NMFは業界を代表する大規模銘柄となります。
このような規模の大幅拡大が投資家にとっての最大メリットと考えられます。投資家にとって規模拡大のメリットは2点あります。
まず1点目として、大規模物件の取得が可能となることです。例えば1棟で500億円規模の物件取得をした場合、合併前の3銘柄ではポートフォリオに占める割合が高くなりすぎることや、その物件の取得利回りによって分配金が変動する可能性が高くなります。資産規模が8000億円を超える新NMFであれば500億円の物件でもポートフォリオに占める割合が10%以下となりますので、分配金への影響の相対的には低くなります。
2点目のメリットとして、前述の通り出資額が4,500億円規模まで増大しますので継続的な規模拡大が可能となることです。例えば500億円の物件取得に併せて300億円規模の増資を行った場合、新NMFでは出資額は7%弱(300億円÷4,500億円)しか増加しません。従って、価格が低迷している時期に1口当たり出資額を下回るディスカウント増資を行っても分配金への影響を少なくすることが可能となるのです。
J-REIT市場の履歴とみると、J-REIT価格の低迷は、賃貸や売買価格などの不動産市況が悪化している時期と重なる場合が多くなっています。一方で、そのような時期は売買価格の低下に伴い高い利回りで不動産の取得が可能な時期でもあります。規模の小さい銘柄はディスカウント増資を行ないにくい状況となりますので、競合が少ない状態で新NMFは安定的に物件取得が可能となると考えられます。
一方で新NMFはデメリットも存在しますが、その点については次回であらためて記載したいと思います。
※1:NMF価格(「合併説明会資料」2015年5月27日のもととなる5月26日終値)をもとに筆者が算出した数値。なお端数投資口の売却による減少などを見込んでいない単純計算値。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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