第83回「アメリカ社債ETFについて」 ETF解体新書

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第83回「アメリカ社債ETFについて」 ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。お金の貸し借りの歴史と、お金の出資の歴史を比べると、前者のほうがはるかに長いことがわかります。実際、株式市場の大きさより債券マーケットのほうが巨大なのです。その債券マーケットは、国が発行する国債、地方公共団体が発行する地方債、政府関係機関が発行する政府保証債などの「公共債」と、「民間債」に分かれます。民間債の代表格が、株式会社が発行する債券「社債」です。社債は国債、地方債などに比べて利回りが高いですが、これは信用リスクの高さの裏返しでもあります。一例ですが、2001年当時、マイカル債を保有していた弊所のお客様がおられました。同年マイカルは民事再生法を申請、その後、個人の債権者(社債保有者)に対しては、額面の30%を上限に弁済が行われることとなったのです。

このような信用リスクのため、社債への投資を足踏みされる方が多いですが、数多の社債を束ねたETFであれば、リスクは軽減されます。2002年に米国市場に上場した「iシェアーズiBoxx 米ドル建て投資適格社債ETF」(LQD)は、社債ETFの老舗です。当該ETFはアメリカの1400余りの投資適格社債に投資を行っています(この場合、投資適格とは、主要格付け会社による信用格付けがBBB格以上を指します)。年間経費率は0.15%、分配金利回りは3.52%となっています(6月30日現在)。また組み入れる社債の満期までの平均残存期間は12.34年となっています。当該ETFの純資産額は200億ドルを超えており、資産の大きさでは米国上場ETFのトップ20に入ります。また、直近3ヶ月の1日あたりの出来高は290万口を超え、きわめて流動性が高いです。

次に、バークレイズ米国社債(10年超)指数との連動を目指す「バンガード・米国長期社債ETF」(VCLT)をご紹介します。こちらもLQDと同様、アメリカの投資適格社債に投資を行います(2009年に米国市場に上場)。1600余りの社債を組み入れ、年間経費率は0.12%、分配金利回りは4.86%となっています(9月4日現在)。当該ETFの純資産額は約13億ドル、また、直近3ヶ月の1日あたりの出来高は約20万口です。上位組み入れ銘柄を見ますと、ゼネラル・エレクトリック・キャピタル・コーポレーション(表面利率5.875%、満期2038年)、ベライゾン・コミュニケーションズ(表面利率6.550%、満期2043年)、ゴールドマン・サックス(表面利率6.750%、満期2037年)、ドイツテレコム・インターナショナルファイナンス BV(表面利率8.750%、満期2030年)などとなっています(7月31日現在)。
ETFは内部に保有する銘柄の内訳(ポートフォリオ)の開示が求められるため、社債ETFの存在が、個々の社債価格の透明性に寄与するという側面があります。注意点としては、社債の価格変動は公共債のそれよりも大きいため、特に金利の上昇局面ではボラティリティが高くなることに留意する必要があります。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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