第85回 15年度上半期の増資動向について 【J-REIT投資の考え方】

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第85回 15年度上半期の増資動向について 【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は、安定した動きを続けています。東証REIT指数の高値と安値の乖離を月ベースで見ると7月から9月にかけては8月の201ポイントを最大に150ポイント以上の変動となっていましたが、10月は62ポイントの変動幅でした。10月の東証REIT指数は月間を通して1,700ポイントを挟んだ展開となり、その動きは11月に入っても続いています。
さて今回は、前回連載の投資家売買動向に続き、15年度上半期(4月~9月)の増資動向について記載して行きます。


15年度上半期の増資による調達額は3,390億円となり、このペースを維持すると過去最高であった14年度の6,186億円を上回ることになります(図表1、参照)。この要因として、12年度から新規上場した銘柄の多くが、資産規模拡大によるポートフォリオ収益の安定性を図るため物件取得を積極的に行っていることが挙げられます。物件取得を行うために増資による資金調達が必要となっているのです。

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増資金額が多くなった13年度以降の動向を四半期別に見ると、図表2の通り15年1月~3月(14年度第4四半期)の増資による資金調達額が最大となっています。これは、日銀が第二弾の金融緩和を行い15年1月上旬に東証REIT指数がリーマンショック後の最高値を付けたことが影響しているものと考えられます。

高い価格で増資を行うことで調達金額当たりの発行口数を少なくすることができるという、プレミアム増資効果を多くの銘柄が期待した、と思われます。具体的に東証REIT指数の平均値は14年10月から12月の1,748ポイントから15年1月から3月には1,885ポイントに上昇しています。


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一方でJ-REIT価格は15年7月から9月に大幅に下落しましたが、増資による調達額は図表2の通りその前の4月から6月とほぼ同じ金額となっています。これは、大半の増資が物件取得とセットで行われるためです。物件取得交渉を行ないながら増資の準備も進めるため、価格が下落しても増資の実施を行うことになるのです。

このように増資は、価格が軟調になっても実施され需給を悪化させる要因となり、7月から9月のJ-REIT価格が大幅に下落した要因ともなりました。東証REIT指数が1,500ポイント以上であれば、大半の銘柄は増資による発行価額が既存の1口当たり出資額を上回るプレミアム増資となります。従って今後もJ-REIT価格が軟調に転じた場合でも、増資が実施されることで下げ幅が広がるという状況が繰り返される懸念があります。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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