マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、安定した値動きを示しています。東証REIT指数は11月25日に8月19日以来となる1,750ポイントを超えとなり、12月1日には1,765.16ポイントまで上昇しました。ただし、12月中旬には米国利上げに伴い外国人投資家がJ-REITを売り越す可能性が高くなっていますので、J-REIT価格は上値が重い展開となりそうです。
さて今回は、平和不動産リート投資法人(証券コード8966、以下HFR)が11月27日に公表した増資(以下、今回の増資)と負ののれんの活用方法について記載して行きます。HFRのスポンサーは名称が示す通り、平和不動産(証券コード8803)となっています。HFRのポートフォリオは、住居とオフィスを主体としホテルにも投資を行っている総合型です。
HFRは、今回の増資で53億円を調達し住居3棟(取得額合計55億円)とオフィスビル1棟(取得額31億円)を取得する予定です。増資前の取得額に対する借入金比率は46%程度となっていますので、今回の増資でHFRは借入金比率を低下させ今後の物件取得余地を拡大させたことになります。
一方で増資の発行価格は本稿執筆時点(12月3日)では未定となっていますが、12月2日の終値84,100円は増資前の1口当たり出資額88,082円を下回っていますので、いわゆるディスカウント増資になります。
ただし、増資前の出資総額(出資剰余金を含む)837億円に対し6%程度出資額が増加する小規模な増資であるため、ディスカウント増資の悪影響は少ないものとなります。具体的には1口当たり予想分配金は、増資前の15年11月期が1,719円になっていますが増資後の16年5月期は1,764円、16年11月期は1,788円となっています。
このように1口当たり分配金だけを見ると、HFRは借入金比率を低減させながら増配を実現することになりますが、16年5月期と11月期は合併により生じた負ののれんを活用し、1口当たり40円上乗せしていることには注意が必要です。HFRは増資公表と同時に「負ののれんの活用方針について」を公表し、16年5月期以降は負ののれんの残高から1口当たり40円を上乗せして投資家に分配することとしています。
HFRは10年10月の合併後は、物件売却損失が発生した時には分配金を安定させるために負ののれんを活用していました。今後も同様に一時的な損失などが発生した場合には、負ののれんを活用することに加え、恒常的な活用も打ち出したことになります。
この背景には、今年度の税制改正によって負ののれんを持つ投資法人は、17年3月末までに終了する決算期までに(HFRの場合は、16年11月期が該当)負ののれんを毎期均等額以上の取崩すことが必要になったためです。すでに大和ハウス・レジデンシャル投資法人(証券コード8984)は、減価償却費の10%相当額を負ののれんを取崩して分配金に充当する方針を示していますが、HFRは税制改正を受けて方針を示した最初の銘柄となりました。
今後は、大和ハウス・レジデンシャル投資法人とHFR以外でも合併銘柄が負ののれんを活用する方針を示すことになりますので、合併銘柄は増配となる可能性が高いものと考えられます。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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