マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
12月は重要イベントが目白押しです。昨日は早速、ECB理事会が開催されました。また4日は11月の米雇用統計の発表とOPEC総会、15・16日にはFOMCと、市場の方向を決定付ける可能性が高いイベントが続きます。市場参加者が多様化しており、その見方も同様に一様ではなくなっています。さらに中国など新興国の動向の影響も大きく、将来を見通すのがきわめて困難になりつつあります。しかし、過去の動きを理解することで、かなりの部分の不透明要素が排除され、市場に振り回されずに対応できるでしょう。
イエレンFRB議長は2・3日に行った講演や公聴会での証言で、「10月のFOMCから現在までの経済情勢は見通しに沿っている」とし、12月の利上げを強く示唆しました。11月の雇用統計で、非農業部門の就業者数が20万人前後増となれば、利上げは確定的になりそうです。一方、3日に開催されたECB理事会では追加緩和が決定されましたが、その内容が市場予想を大きく下回ったことから、ユーロが大きく買い戻され、欧州株が下落し、米国株にも売りが出ました。追加緩和への期待値が大きすぎたことが、株価の大幅安につながりました。
ECBは、実は追加緩和策の限界を悟っているのではないでしょうか。なぜなら、日銀の緩和策の成果からそれが確認できるからです。そうであれば、ドラギECB総裁が言うほどの追加策が今後は出てこない可能性があります。その結果、ユーロ買いが進み、ドルが売られるなど、これまでのポジションが大きく巻き戻されることが想定されます。もともと、米利上げが実施される前にドルはピークアウトする傾向があります。また前回の本欄では、「利上げまでの株高局面では、利上げ後の調整に備えて手仕舞い売り」としていましたが、結果的に今週の動きはその通りの展開でした。今後、戻りがあっても、この方針は継続したいと思います。今回の押し目を拾っても、米利上げまでには売る必要があるでしょうから、値幅はそれほど期待できないでしょう。
さて4日は、11月の米雇用統計の発表に加え、OPEC総会が開催されます。いずれも市場に大きな影響を与える材料です。OPEC総会では、サウジアラビアが減産を提案するといった観測報道があったようですが、実際の決定を待つしかありません。現状ではサウジが減産の大部分を負担する形での減産は考えにくいように思われます。減産合意に持ち込むには、「OPECがいかにロシアを取り込むか」がポイントです。12月中旬にロシアを交えた非公式会合の開催が行われる見通しです。ここで、ロシアの顔が立つように、OPECが「表面上」妥協し、ロシアも加えた産油国全体での減産合意となれば、市場に大きなサプライズとなるでしょう。これにより、株価は下落し、為替市場でもドル高が是正されるなどの影響が出るかもしれません。タイミング的にはFOMCと重なりそうですし、いずれにしてもこの2週間は市場動向から目が離せません。
さて戦略面では、前回同様、石油・資源関連株の大幅な調整を利用した押し目買いは検討の余地があると考えています。首尾よくドル安に転換すれば、売り込まれてきたドル建てコモディティに底打ち機運が高まるでしょう。石油や非鉄の上昇で企業の生産コストは上昇するため、指数全体は上がりづらくなるかもしれませんが、石油・資源関連株は収益向上で株価の上昇が期待できます。他のセクター対比でのパフォーマンスは相対的に良好なものになるとみています。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
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