マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、16年に入り6日まで3営業日続けて下落しています。東証REIT指数は、15年末の1,747.54ポイントから1月6日に1,714.52ポイントまで2%程度の下落となっています。ただし、日経平均株価が同期間で4%を超える下落率となっていることと比較すると、J-REIT価格は比較的安定して推移しているとも言えるでしょう。
さて今回は、16年最初の連載となりますので、16年のJ-REIT価格を展望していきます。結論を先にしますと東証REIT指数では、1,700ポイントから1,900ポイントのレンジで推移すると見ています。前述の通り、年初の東証REIT指数は1,700ポイント程度ですのでJ-REIT価格は上昇余地が大きいと考えています。
上昇要因として、本連載で何度か指摘している通りオフィスビル市況回復の恩恵がオフィス系銘柄の分配金増加に繋がる可能性が高いことに加え、12月18日に日銀が金融緩和の補完措置を公表したことで長期金利が極めて低い水準に留まることが想定されるためです。
日銀の補完措置は、J-REITに関しては従来の個別銘柄の5%以内というものから10%以内まで買入れを行うとの変更が直接的な内容となっています。ただし、投資対象は従来通りAA格相当の銘柄であり、年間900億円程度の買入れ額も変更となっていません。つまりJ-REITに対して直接的な内容に関しては、J-REIT価格の上昇要因とはなりにくいものです。
一方で、J-REIT投資にとってより重要な点は、日銀が購入する長期国債の年限を長期化するということにあったと考えられます。10年国債の利回りは図表の通り、15年夏から低下基調が明確になり日銀が金融緩和の補完措置を公表した12月18日からは0.3%を下回って推移しています。また10年国債の月間平均利回りは、12月に1月以来となる0.3%を下回る水準になりました。
15年1月の東証REIT指数は、1,900ポイントを超えて推移していました。さらに日銀の補完措置によって10年国債の利回りが15年のように0.5%を上回る可能性は低くなったと考えられるため、J-REIT価格の上昇余地は大きくなっているのです。
このように長期金利の動向だけを見れば、東証REIT指数は15年1月中旬のように2,000ポイントに近づくとも考えられます。しかし国債の利回りとJ-REITの利回りとの乖離幅(スプレッド)に注目して投資を行う金融機関は、15年夏のJ-REIT価格急落を経験しています。従って金融機関が15年1月から6月までのように積極的な投資を行わない可能性もあるため、前述の通り東証REIT指数のレンジを1,900ポイント程度までとしています。
なお16年の想定レンジを超える変動要因としては、上値側では日銀の第三弾金融緩和措置の実施した場合には2,000ポイント超える上昇、下値側では中国を含む新興国経済の大幅悪化があった場合には1,500ポイント程度までの下落が考えられます。
15年と同様に16年のJ-REIT価格は、直接的に関連しませんが海外市場動向の影響を受けやすい状況が続くものと考えられます。従って一時的な上昇局面では、利益確定を考慮に入れる投資戦略が重要となりそうです。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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