第6回 今年の米国株は下げやすい傾向【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第6回 今年の米国株は下げやすい傾向【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

28・29日開催のFOMCでは、市場の予想通り、政策金利は据え置かれました。声明文に対しては、市場関係者から様々な見方が出ています。一見するとハト派のように見えますが、昨年12月に利上げを実施したばかりですので、FRBの判断が間違っていたとのメッセージは出せなかったのだと考えています。FOMCの結果を受けて、当日の米国株は急落しました。市場のFRBに対する見方がネガティブだったことが窺えます。また、これまで米国株と原油相場が連動する展開にも徐々に変化が見られ始めています。原油価格が本格的に戻した場合、個人消費や景気には悪影響が出てきます。また企業の生産コストの上昇による業績悪化を背景に、株価の上値は抑えられることになりそうです。OPEC加盟国と非加盟国間で供給削減に関する話し合いがもたれるとの観測も出始めています。原油相場の本格的な反発にはこれまで以上に注意が必要と考えます。

米国株式市場の環境を見渡すと、企業業績の悪化によるバリュエーションの低下リスク、ダウ運輸株指数の低迷、景気指標全般の悪化など、良い材料が見当たりません。さらに、今年は「アノマリー」が米国株の上値を抑えそうです。大統領選挙の年の米国株のパフォーマンスは平均7%超の上昇です。過去の米国株が基本的に上昇していることが理由ですが、現職の大統領が8年目に相当する場合(つまり今年)には14%の下落となっています。また「1月の株価はその年の株価動向を表す」といわれますが、米国株の場合、年間騰落率がマイナスのときには、1月はほぼすべてのケースで下落しています。今月の米国株は下落で終わるでしょうから、年間ベースでも下落するリスクが高まりそうです。

また米大統領選で政権政党が交代した場合、米国株は大きく下落する傾向があります。1920年には32.9%、1932年には23.1%もの下落となりました。直近でも2000年の6.2%、2008年の33.8%それぞれ下落しています。共和党の候補がトランプ氏となり、大統領に就任するような事態になれば、米国株はかなり厳しい下げになりそうです(もちろん、そうなるかはわかりませんが)。一方、現在の米国株の高値からの下落率は12%程度ですので、高値から20%超の下落となる、いわゆる「ベアマーケット」ではありません。しかし、ベアマーケット入りした場合の過去の平均下落率は32.1%です。したがって、20%超の下落となった場合には要注意です。

今年の米国株は取引開始の初日に1.53%下落しました。初日に下落したケースとしては1937年の1.46%安、2008年の1.44%安のケースがありますが、年末までにそれぞれ37.7%、37.6%下落しました。1937年は29年の世界恐慌後の景気回復期に利上げが実施された影響で株価は急落し、株価の回復に8年を要しました。2008年はいうまでもなく「リーマンショック」です。取引開始初日の株価下落が年末までの下落を示唆するわけではありませんが、注意は必要といえます。

米国株は昨年12月の利上げにより、上昇しづらい状況にあります。FRBが利上げの正当性を強調するようになれば、それは危険なサインかもしれません。今回はネガティブな話になりましたが、米国株の投資タイミングには十分に注意したいところです。一方、最近は株安に対するリスク回避として金が買われています。金価格が堅調に推移する中、バリック・ゴールドなどの金鉱株も底堅く推移しています。世界的な株安が続いた場合でも、金鉱株には投資妙味があると考えています。



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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)

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