マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
米国株は堅調さを取り戻したように見えます。本日は2月の米雇用統計の発表がありますが、堅調な内容になるとみられています。その結果、利上げ観測が高まるかもしれません。最近の上昇がきわめて強いので、利益確定の売りが出ることも想定されます。15・16日(米国時間)開催のFOMCの重要な材料になりますので、本日の雇用統計には注目したいところです。
その一方で、米国株の最近の極端な動きが気になっています。S&P500に採用されている銘柄数の動きをみると、一日で400銘柄以上が上昇あるいは下落する日が非常に多くなっています。過去の実績を調べてみると、400銘柄が上昇あるいは下落となることは、90年代にはほとんどありませんでした。しかし、最近では上昇すれば大半の銘柄が上昇し、下落したときには大半の銘柄が下落するといった、極端な傾向が、みられるようになっています。結論から言えば、このような状況は、将来の株価の不安定さにつながると考えられます。振り返ると、2006年までは大半の銘柄が同じ方向に動くことは年に10回もありませんでした。しかし、サブプライムローン問題が取りざたされ、株価が不安定になり始めた2007年には32回に達し、2008年には52回に達しました。さらに欧州債務危機が起きた2011年には70回も起きています。このように、市場が不安定な時期には、多くの銘柄の株価が一方向に動くことが増えるといえます。ちなみに、今年に入ってからもすでに10回起きています。これを年率換算すると60回に達します。60回を超えたのは2011年だけですから、今年の株価がいかに極端な値動きになっているかがわかります。また株価が上昇し始めた2012年から15年までの平均は27回、その前の株価が不安定だった5年間の平均が50回だったことからも、この点が指摘できると思います。このようなデータから、米国株はまだまだ不安定かつ下落リスクが残る状況が続くと考えています。
米国株式市場は世界の多様な投資家が集う、世界でも類まれな市場であると考えられます。そのためか、本欄でも良く取り上げるようないわゆる「アノマリー」による市場分析が有効であることが多いように感じます。つまり、「歴史は繰り返す」という前提の下、将来の株価動向は過去の繰り返しに過ぎないとの考えに基づいて、過去のデータを利用して将来を見通すというものです。本欄やセミナーで、今年の米国株の下落の可能性をかなり早い段階で指摘できたのも、これらの過去データを重視したことが背景にあります。特に米国では、独立系のリサーチ会社が多く存在しており、独自のアングルで市場を分析し、レポートを発行しているところが少なくありません。私もそれらを大いに参考にしています。
さて、1月29日の本欄で取り上げたバリック・ゴールドですが、一ヶ月以上経ったいまもさらに上昇しており、取り上げたところからの上昇率は約40%に達しました。金価格の上昇が大きく影響していると考えられます。金上場投資信託(ETF)への資金流入も顕著になっているようです。今年に入ってからの金ETFへの資金流入額は、昨年一年間の流出額をすでに超えているようです。さらに一部大物ヘッジファンドが資源・石油関連銘柄を安値で買っていたとの報道もあります。このように、グローバル投資家は金を中心に資源関連銘柄にしっかりと資金を振り向けています。このような広い視点を持った投資家の行動をぜひ参考にしたいところです。
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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
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