第11回 米国株は2000年に似た値動き【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第11回 米国株は2000年に似た値動き【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国株は戻りを試す動きが続き、とうとう年初来高値を回復しました。きわめて強い戻り局面にあるといえます。このままの勢いでいくと、昨年来高値の更新も視野に入りそうな展開です。FOMCでハト派的な見方が示されていましたが、その後、複数のFRB高官が4月利上げの可能性を示唆し、市場がやや不安定になる時期もありました。しかし、イエレンFRB議長が利上げに慎重な姿勢を示したことで、ドル高基調が修正され、投資家のリスク選好が再度強まった印象です。イエレン議長は、国内経済の強さを認めつつも、世界情勢や金融市場の動向を注視する姿勢を示しています。一時は4月利上げの可能性が高まりましたが、少なくとも4月利上げはなくなったと見てよさそうです。今日は3月の米雇用統計の発表がありますが、よほどのことがない限り、利上げ観測の再燃はないでしょう。このまま米国株が上昇し続けるのか、非常に興味が高まるところです。

このように強い動きが続くと、どうしても上昇基調が続くと考えがちですが、ここで再度、今年が大統領選挙の年であることに焦点を当ててみたいと思います。1月29日の本欄でも解説しましたが、今後の米国株の方向性を見る上で、大統領選挙の年の株価の変動パターンは外せないように思います。チャートにもありますように、1932年以降の4年ごとに到来する大統領選挙の年の平均的なパフォーマンスは、年率7%のプラスです。しかし、現職の大統領が二期・8年間務めた年のパフォーマンスはマイナス14%と大きく落ち込みます。実は、今年はオバマ大統領の二期・8年目ですから、過去のパターンでは米国株のパフォーマンスはきわめて悪くなるはずです。しかし、いまの株価動向を見ると、今年はそうならないだろうという声が聞かれそうです。そこで、より詳細を調べてみると、今年の株価動向は、2000年当時と非常に似ていることがわかりました。市場の背景や株価変動のタイミングこそ違いますが、株価の方向性はきわめて似ています。今年のほうが調整・戻りのタイミングが早いので、現在の戻り局面は早晩終了し、4月中に大きな下げに見舞われそうな気配です。

市場動向を見る際には、どうしても目先の材料を気にしがちです。特に米国の重要経済指標への関心は高くなりがちです。米雇用統計やISM製造業景況感指数は確かに重要な経済指標ですし、その内容次第で市場の方向性が決まることもあるでしょう。しかし、過去における価格変動のパターンを認識しておくと、目先の材料に振り回されることも少なくなり、より大局的に判断することができるようになります。今年のような、ビッグイベントがあるときには、特に過去のデータを重視するとよいでしょう。トムソン・ロイターの調査では、S&P500採用企業の2015年第4四半期決算は前年同期比で2.9%の減益となったもようです。また、2016年第1四半期の一株利益について、95社が悪化もしくは市場予想を下回ると回答しています。さらに、2016年の予想PERは16.9倍とのことです。PERの適正水準は15倍が世界の株式市場のコンセンサスですから、米国株にはすでに割安感はないことがわかります。この点を認識した上で、過去のデータもあわせて総合的に判断すれば、現在の米国株に対して取るべきアクションはおのずと決まってくるのではないかと考えています。

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江守 哲

エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)

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