マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
米国株は想像以上に強い動きになっています。本欄では「米国株のアノマリーから、今年は大きく下落する」との見方を示してきました。年初こそ、米国株は急落し、見通しの通りになりましたが、その後の切り返しは予想を超えるものであり、昨年来高値をも更新する展開にあります。ダウ平均株価は18,000ドルの大台も視野に入るなど、年初の急落を忘れたかのような強さです。その背景には、原油相場が落ち着きを取り戻しただけでなく、上昇機運が高まったことが挙げられるでしょう。これまで悪役だったエネルギー関連株がいまは米国株全体を押し上げる状況になったわけです。
現在の米国株高は、ドル安による米国企業の業績押し上げ効果とドル建てで取引される原油価格の押し上げが背景にあります。最近の市場では「原油高=株高」の連想が働いており、原油高は米国株の買い材料という位置づけになっています。WTI原油先物が上場された1983年以降のWTI原油とS&P500の価格がどの程度同じ方向に動いたかを調べてみると、概ね半分程度の比率でしかありませんでした。しかし、リーマンショック後の2009年以降に限ってみてみると、7割前後の比率で同じ方向に動いています。従来であれば、原油高が景気や企業業績の圧迫要因として認識されていたのが、いまは投資マネーの動向が多きく影響しているようです。株価が上昇しているときには、原油を買う余裕が生まれると言ったほうがよいのかもしれません。
その原油相場ですが、市場では17日にカタールのドーハで開催される主要産油国の増産凍結に関する会合に注目しています。サウジアラビアやロシアなど産油4カ国は、2月に他の産油国が参加することを条件に、増産を凍結することで合意しました。今回の会合では、この合意に参加する国の拡大を目指しています。多くの産油国が生産・供給を抑制する姿勢を示すことで、原油価格の回復を図ろうというものです。この会合にはイランも参加しますが、石油相は参加せず、代表団が送り込まれる見通しです。イランは経済制裁により原油輸出が制限され、外貨が大幅に減少しました。これを取り戻すために、産油量の回復を優先させたいとしており、今回の合意には参加しない見通しです。そのため、今回は合意がなされず、失望感から原油価格が再度下落に向かうとみている市場関係者も少なくありません。しかし、原油価格の低迷で苦しい状況におかれているのは、どの産油国も同じです。そのため、17日の会合では、具体的な方法は別にして、産油各国が増産凍結で合意したとの強いメッセージを出すことで、原油価格を押し上げることを狙うものと思われます。もし、何も合意されなかったとすれば、原油相場は急落するリスクが高まるでしょう。しかし、産油各国はそれを避けたいと考えています。その意味からも、明確なものでなくても、合意したとのメッセージを発することになるでしょう。産油国の思惑通り、原油相場が上昇すれば、インフレへの影響が出てくるため、利上げ機運が高まることが想定されます。その結果、米国株には好影響よりも、むしろ悪影響のほうが大きくなるでしょう。また原油高は景気や個人消費を圧迫します。当然、企業活動には大きな重石になってきます。この結果、米国株の割高感が意識される可能性が高まることが想定されます。米国株は昨年来高値を意識する動きの中、徐々に上値は重くなると考えています。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草出版)
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