第97回 大和ハウス工業系2銘柄の合併メリットについて【J-REIT投資の考え方】

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第97回 大和ハウス工業系2銘柄の合併メリットについて【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は、堅調に推移しています。東証REIT指数の4月の平均値は、2015年1月に続き2回目の1,900ポイント超えとなりました。4月の日銀政策決定会合では追加緩和を行わないことになり、5月6日には東証REIT指数が1,900ポイントを割り込みました。しかし、その後は反発していますので日銀の金融緩和先送りの悪影響は解消したものと考えられます。

さて今回は4月15日に公表された、大和ハウス工業がスポンサーとなっている大和ハウス・レジデンシャル投資法人(証券コード8984、以下、大和レジ)と大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下、大和リート)の合併について記載して行きます。今回の合併は、両投資法人の投資主総会の承認を条件として大和レジが大和リートを9月1日に吸収合併するかたちになっています。従って大和リートは8月29日に上場廃止となる予定です。
存続投資法人は大和ハウス・レジデンシャル投資法人ですが、投資方針を様々な用途に投資する総合型とするため名称を大和ハウスリート投資法人と変更する(証券コード8984、以下、新大和リート)ことしています。新大和リートは、合併後取得予定の物件6棟172億円と併せるとポートフォリオ規模が5,000億円を超え、J-REIT業界で第7位になる(※1)としています。
合併説明会資料(※1)では、合併の意義について様々な面を記載していますが、合併による規模拡大を果たすことで運用の柔軟性を向上させる、という目的が大きいと考えられます。特に合併説明会資料のP15に記載されている「大規模物件の取得やM&A等の取り組みが容易に」という点は、合併によりポートフォリオ規模を拡大しないと実現が難しい面があります。合併前の大和レジのポートフォリオ規模は2,500億円程度、大和リートは2,000億円程度となっていましたので、200億円を超えるような物件を取得した場合にはその物件の影響を大きく受ける状況であったと考えられます。
また規模を拡大することで、物件の売却による影響を軽微にすることも可能です。物件売却を行うと、売却益が計上できたとしてもその後の決算期では当該物件の賃貸収益は減少することになります。しかしポートフォリオの規模が大きければ、賃貸収益減少の影響を少なくすることが可能です。
特に、大和レジは旧ニューシティ・レジデンス投資法人との合併を行っている銘柄です。従ってスポンサーである大和ハウス工業が開発した物件の保有比率は低い状態であり、大和レジが存続銘柄となっているため2016年2月期末で320億円程度ある保有物件の含み益は維持できます。つまり新大和リートは、大和レジの保有物件を売却した場合に売却益を計上しやすい状況が維持できているだけでなく、ポートフォリオに与える影響を少なくすることが可能となっているのです。
価格動向を見ると合併に対する投資家の評価は、高くなっています。具体的には、前月末と比較して4月に大和リートは17%弱、大和レジは12%を超える価格上昇を示し業界でそれぞれ1位、2位となっています。
なお、今回の合併は野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3462、以下NMF)と同様にのれんが発生するものとなりました。従ってのれん償却が発生しますが、NMFと異なりのれん償却費は内部留保を取り崩すことで、分配金への影響を回避する仕組みとなっています。このように合併による収益への影響や合併によるデメリットについては次回記載する予定です。

※1:2016年4月18日付「大和ハウス・レジデンシャル投資法人大和ハウスリート投資法人合併説明会資料」に拠る。


コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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