マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
4月に開始されたFOMCの議事要旨では、6月の利上げについて検討されていたことがわかりました。しかし、市場はこれをほとんど織り込んでいなかったこともあり、サプライズとして受け止められました。振り返ると、最近のFRB高官の発言の多くが、早期の利上げの可能性を示唆するものでした。FRBは早めに利上げをしたいと考えているのに対し、市場がそれを全く理解していなかったため、利上げが意外に早く実施される可能性が高いことを市場に織り込ませようとしていたことがわかります。米国のスケジュールを考えると、大統領選も控えていることもあり、7月以降は利上げがしづらいと考えられます。よほど軟調な経済指標が出てこない限り、6月利上げの可能性がかなり高まったといえそうです。ただし、その後は11月に大統領選を控えていることもあり、年末までは利上げはないでしょう。そう考えると、6月の利上げを迎えるまでにドルが上昇し、その後は再びドルが反落することが想定されます。
ドルの方向性を見る上で、ドル指数の長期トレンドにも注目しておきたいところです。ドル指数(ドルインデックス)は、指数を構成する通貨の半分以上がユーロで、円とポンドを合わせると8割を超えます。これらの通貨に対するドルの動きは、概ね7年ごとに転換しています。直近では、2015年までのドル上昇が7年間続きましたので、そろそろドル高基調が転換すると考えられます。事実、ドル円は今年に入って、かなり明確に円高基調に転換しています。したがって、ドルは主要通貨に対して今後7年間、下落基調が続く可能性がありそうです。米国がドル安を志向する際、株価との連動性が重視されているようにみえます。つまり、米国株が上昇しているときはドル高でもよいのですが、下落に転じるとドル安に転換させ、景気や株価を維持しようとしているように感じます。そうであれば、今後は景気指標次第では、米国はかなり明確な形でドル安政策を推し進めてくるものと思われます。最近の日米の金融当局者の発言の攻防を見ていると、そのように感じられます。米国は利上げを実施するでしょうが、それがドル高政策を意味するものではありません。この点には注意が必要でしょう。
一方、グローバル株式とコモディティ指数のレシオの動きを見ると、2011年12月から始まった「株式>コモディティ」のトレンドが、今月に入ってかなり明確な形で「コモディティ>株式」に転換しています。これは、原油相場は底打ちから上昇に転じたことが大きいと考えられます。また、ドル高基調がようやく反転し、下落に転じたことも影響しています。金や原油などとドル指数の動きを比較すると、ドル指数の下落への転換と金価格の反発のタイミングが見事に一致しており、コモディティ価格がドル高により押し下げられてきたことがわかります。短期的には、米利上げ観測を背景にドルが反発し、ドル建てコモディティ価格が抑制される動きが見られるかもしれません。しかし、長期的にはドル安基調が続くと思われ、これがドル建てコモディティを支えることになるでしょう。今回の長期的なトレンドの転換を理解しておくことが、将来のポートフォリオ構築のポイントになりそうです。株式とコモディティの強弱感は概ね4年ごとに入れ替わっています。2012年から4年がたったいま、今後4年間のポートフォリオはコモディティが軸になるものと考えています。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)
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