第15回 原油相場は底堅い展開を想定 【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第15回 原油相場は底堅い展開を想定 【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

OPEC総会が開催されました。新たな政策を打ち出すことなく閉幕しました。事前には、サウジアラビアが新たな政策枠について提案するとの報道もあったようですが、結局合意には至りませんでした。いまのところ、OPECに新しい動きが見られません。原油価格が50ドル近辺にまで戻してきたことも大きいのでしょう。また、生産量も大きく増やすことができないという現実もあります。現在のOPECの産油量は日量3,250バレル程度ですが、加盟国の中で増産余地があるのはサウジとイランぐらいです。そのイランもすでに生産量が同355万バレルにまで回復しており、増産余地はせいぜい数十万バレル程度とみられています。このように考えると、サウジが余剰生産能力を利用して増産するといった暴挙に出ない限り、OPECから供給が急拡大することはないといってよいでしょう。

一方、世界的な原油需給の緩和につながった米国のシェールオイル生産量の減産傾向も顕著なようです。これが最近の原油価格の反発の直接的な要因であるといってよいでしょう。報道によると、米国のシェールオイル企業の破たんは100社を超えているもようです。これだけの企業が破たんすれば、さすがに石油掘削リグの稼働数は減少し、産油量も自然に減少するわけです。一時は日量960万バレルに達して原油生産量は、最新週で同873万バレルにまで減少しています。この流れは当面続くと考えられます。一部には、原油価格が反転すれば、すぐに生産活動が再開されるとの指摘も聞かれます。しかし、それほど話は簡単ではないと考えられます。というのも、40ドル台の原油価格では、生産が継続できないことが明白になったわけです。したがって、生産再開に必要な資金の出し手からすれば、原油価格が一定期間、たとえば50ドル以上の水準で続くことが確認できないと、新規の資金投入はできないでしょう。採算を考慮すれば、50ドル程度ではなく、さらに高い価格が必要でしょう。そう考えると、米国内の産油量が再び増加に転じるには、かなり高いハードルがあると考えてよさそうです。

また、あまり注目されていませんが、米国のガソリン需要も堅調に推移しています。最新週の数値は日量971万バレルで、この数年の中でも最高水準にあります。米国では、5月30日のメモリアルデーを境に「ドライブシーズン=ガソリン需要期」に入りました。これから需要の増加が本格化します。ガソリン需要の増加と在庫の減少が顕著になれば、これを材料に原油相場が押し上げられる可能性が高まりそうです。また、原油価格はドライブシーズン入りまでに上昇基調にある場合、秋口までその基調が続きやすい傾向があります。今年はまさにそのパターンになっています。50ドルの大台を明確に上回るようだと、夏場に向けて60ドルを目指す動きになりそうです。

懸念材料があるとすればドル相場の動向です。米利上げ観測が強まりつつあり、これがドル相場を押し上げる可能性があり、その場合にはドル建てで取引される原油相場の重しになるでしょう。しかし、7月にも想定される利上げを織り込む形でドルの上値が重くなれば、原油相場も上向きやすくなりそうです。そもそも、原油価格は夏場から秋口に上昇しやすい傾向があります。WTI原油は年内は60ドルを目指す展開になるとみています。需給要因にも目を配りながら、押し目を買う方針が賢明なように思われます。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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