第19回 米大統領選挙が米国株のワイルドカードに 【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第19回 米大統領選挙が米国株のワイルドカードに 【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国株は依然として高値で推移しています。米国の主要企業の四半期の企業業績の発表が続いていますが、事前予想を上回る企業が多いもようで、市場に安心感が広がっています。しかし、業績自体は5四半期連続で減益となっており、楽観できる状況までにはいっていないように思います。利益の5割を自社株買いに使い、3割を配当に充てるといった、株価・株主優先の政策が株高基調の背景にあると考えられるため、現状を楽観するわけにはいかないでしょう。まして、英国の欧州連合(EU)離脱決定を背景とした欧州通貨安とドル高基調が鮮明になっており、これが将来の業績に重くのしかかる可能性があります。また、ドル高を背景に、新興国通貨・資源国通貨の下落の懸念が高まっていることも、市場心理を冷やす可能性があります。ドル高が様々な市場に及ぼすネガティブな影響には注意が必要でしょう。特に最近の原油価格の下落は、需給緩和懸念に加え、ドル高も影響している可能性があります。米連邦準備制度理事会(FRB)は、26・27日の連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利の据え置きを決めましたが、その背景にドル高基調を鎮める目的もあったのかもしれません。

さて、今年は4年に一度の世界が注目する2つの大きなイベントがあります。ひとつは夏季五輪、もうひとつは米大統領選挙です。その米大統領選挙ですが、いよいよ各党の指名候補者が確定しました。民主党はヒラリー・クリントン氏、共和党はドナルド・トランプ氏です。今回の大統領選は、それぞれの候補の立場から極めて異例づくめの選挙であることは、すでに報じられている通りです。クリントン氏は、女性初の民主党候補で、女性初の米大統領の座を狙います。トランプ氏は行政の経験がない大統領になる可能性があります。また、両者のこれまでの経歴も大きく違いますし、様々な側面から対決姿勢が煽られやすい構図にあると思われます。この点だけでも、今回の大統領選は十分に興味深いのですが、その一方で市場の観点からすれば、やはり大統領選の株式市場への影響についても念頭に入れておくべきでしょう。過去の現職大統領の所属政党の候補が敗北した場合、米国株はきわめて大きな下げに見舞われています。例えば、直近では2008年には33.8%下落しました。このときは、民主党から出馬したオバマ現大統領が、共和党候補のロムニー氏に勝利しました。2000年には6.2%下落しましたが、このときには共和党候補のブッシュ氏が民主党候補のゴア氏に勝利しました。このように、過去の傾向を調べると、政権政党の交替は市場心理を冷やし、株安をもたらしているようです。今年の米大統領選挙が不透明感が強いこともあり、これまで以上に注意が必要といえそうです。

また政党と金融政策の関係についても、あらかじめ知っておくとよいでしょう。過去の政党とFRBの金融政策の関係をみると、大統領が所属する政権が民主党のときには金融政策は緩和傾向、共和党のときには引き締め傾向にあるようです。トランプ氏は緩和的な政策を掲げているようですが、その一方で「FRBのイエレン議長を交代させる」などと、きわめて強硬な姿勢も見せています。そのため、実際にトランプ氏が大統領になれば「強いドル」を掲げ、金利引き締めに走るかも知れません。

さて、今回の大統領選でどちらの候補が選ばれるでしょうか。11月8日の投票日に至るまでの過程を注視していきたいと思います。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役 
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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