第103回 「米国発ETFの苛烈なコスト競争について」 ETF解体新書

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第103回 「米国発ETFの苛烈なコスト競争について」 ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。米国では4、5年前から、ETFのコスト競争が激しさを増しています。ブラックロック、バンガード、チャールズ・シュワブという3社が、まさに三つ巴となって継続コスト(年間経費率)の競争を繰り広げているのです。ブラックロックは「iシェアーズ」ブランドを持つ、世界最大のETF運用会社。バンガードはファンド保有者が会社を所有するユニークな構造を持ち、ETFの経費率を断続的に下げています。一方、大手オンライン証券会社であるチャールズ・シュワブは近年ETFの運用会社として頭角を現しています。
ETFの指標でもっとも重要なのは純資産残高(AUM)です。AUMはETFの規模を示しますが、これは今までの資金流入が積み重なった結果としての数字です。ブラックロックは純資産額において最大のETF運用会社ですが、毎年の純資金流入では近年バンガードの後塵を拝してきました。
危機感を抱いたブラックロックは2012年、「i シェアーズ コア」という新たなブランドを立ち上げ、年間経費率を思い切って下げたETFを導入しました。一例ですが、「iシェアーズ コア S&P Total U.S. Stock Market ETF」(ITOT)と「iシェアーズ コア S&P 500 ETF」(IVV)はいずれも経費率を年0.07%としたのです。

同じく2012年の9月に、チャールズ・シュワブは自ら運用を行うETF(Schwab ETFs)の年間コストを引き下げました。具体的には「シュワブ U.S. Broad Market ETF」(SCHB)と「シュワブU.S. Large-Cap ETF」(SCHX)という、ITOT、IVVと投資対象が似通ったETFの経費率をそれぞれ0.04%に引き下げたのです。以降、3社の間でコスト競争が断続的に続いていますが、バンガードのコスト削減には他社にはない特徴があります。同社は外部に株主を持たないため、投資家の利益を優先させる意思のもと、運用資産残高が一定割合増すとその都度年間経費率を引き下げるのです。
2015年11月、ブラックロックは7本のi シェアーズ コアETFについて更なるコスト引き下げを実施しました。先述したITOTについてはその経費率を0.07% → 0.03%としたのです(この時点で、似通った投資対象であるシュワブのSCHBは0.04%、バンガードの「Total Stock Market ETF」(VTI)の経費率は0.05%でした)。それから間もなく、チャールズ・シュワブはSCHBのコストをITOT と同じく年0.03%に引き下げました。
大手運用会社は純資産残高、資金流入のシェアを確保するため、今後も苛烈なコスト競争を続けることでしょう。その果てに何が待っているのか?筆者は年間経費率ゼロ%のETFが出現しても不思議ではないと考えます。ETF本体で利益が得られなくても、ETFが保有する株式を、信用取引を行う投資家に貸し出すことで金利収入が得られるためです。前述したチャールズ・シュワブは証券会社として、すでに売買委託手数料ゼロのETFを200本以上ラインナップしています。売買手数料も継続コストもかからないETFをいつの日か見てみたいものです。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表  http://www.sinyo-fp.com/

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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