第21回 株価調整前に検討したいこと【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第21回 株価調整前に検討したいこと【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国株が堅調さを維持しています。歴史的高水準を維持しているわけですが、その背景には金融市場に対する不透明感がやや後退していることが背景にあるものと思われます。一方で、これまで堅調さを維持してきた経済指標はまちまちの状況になりつつあります。米国株は高値圏を維持していますが、勢いよく上昇していかないのは、これらが背景にあるのかもしれません。また市場の関心は、今後の米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に移っています。市場に対してフレンドリーな政策が維持されるのか、市場は26日のイエレンFRB議長の講演に注目しています。しかし、最近のFRB関係者から出てくる発言は、総じてタカ派的、つまり利上げに前のめりなものになっています。ニューヨーク連銀のダドリー総裁は「9月利上げの可能性」に言及しています。これまで海外情勢を重視してきた同氏のこの発言は、市場を驚かせています。この点からも、26日のイエレン議長の発言には注目せざるを得ません。タカ派的なものになれば、ドルが上昇し、これが株価の下押し圧力につながる可能性があるため、注意が必要でしょう。

さて、株価が急落する前に、その対処方法をあらかじめ念頭に入れておくことは非常に重要です。つまり、株価が高値にあるうちに、資産の一部を解消し、現金化するか別の資産に移すことを検討することが肝要です。さて、今後世界的に株価が下落に転じた場合、どのような資産あるいは投資対象市場に注目すべきでしょうか。世界の株価動向を示す「MSCI世界株式指数」が下落した際の、主要市場の動向を調べてみると、非常に興味深い結果を得ることができました。結果から言えば、まさにセオリー通りといえます。筆者が考える過去30年の世界の株価指数の下落局面では、ダウ平均株価や日経平均株価が下落しています。特に米国株は世界の株式市場のけん引役でもありますので、むしろ米国株が下げると世界の株式指数が下げると考えた方がよいでしょう。もちろん、このような状況になれば、日本株も下落から逃れることはできないといえます。リスク資産である株式の価値の低下がみられれば、安全資産である金(ゴールド)はやはり上昇しています。特に、株式指数が5割を超える下落となったリーマン・ショック時には、金価格は18%の上昇となっています。WTI原油は概ね株式指数との連動性が高い動きを見せていますが、地政学的リスクや需給要因など独自の材料で動くケースも少なくなく、一概に株価と連動しやすいともいえません。一方、米国債はやはり安全資産として機能しており、株価が下げているときに概ね上昇しています。株価下落時に投資資金が株式から国債に移るのは、まさにセオリー通りです。興味深いのがドルの動きです。株価下落期には平均的には上昇しています。これはドルが安全資産としての機能を持ち合わせているからでしょう。ただし、ドル/円は下落する傾向が鮮明です。ドルはユーロやポンドなどに対しては上昇するのですが、円に対しては下がる傾向にあるといえます。この点からも米国市場に変調がみられた場合には、ドルは上昇しやすい一方でドル/円は下落するといえます。またその際には金が買われやすいということになります。米国株は現時点でもなお堅調さを維持していますが、このような状況だからこそ、資産の一部を安全資産である金や米国債に移すことを検討したいところです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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