第22回 1937年と2008年の株価動向に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第22回 1937年と2008年の株価動向に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

世界の投資家の目が2日発表の8月の雇用統計に向かっています。市場では、「今回ほど重要な雇用統計はない」とさえ言われています。その理由は、今回の雇用統計の内容が、利上げ時期を検討している米連邦準備理事会(FRB)の政策判断に大きく影響を与えると考えられるからです。市場の関心を集めていた、イエレンFRB議長が米ワイオミング州ジャクソンホールで行った講演では、「追加利上げの根拠がこの数カ月で強まっている」とし、利上げ実施の可能性を示しました。またフィッシャー副議長が、「経済データ次第」としつつも、9月を含めた年内の2回の利上げの可能性について「イエレン議長が講演で述べたことはそれを否定するものではない。ただし、今後の経済指標を見るまでは分からない」としました。フィッシャー副議長は利上げの判断について「堅調な雇用統計の結果が続いており、8月の雇用統計が重要」としたことから、雇用統計の重要性が急速に高まったわけです。市場では、この二人は利上げを慎重に行うべきというスタンスのハト派とみられてみました。しかし、ここにきて利上げに関してかなり踏み込んだ発言をしています。この結果、20日・21日開催の次回の連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ機運は急速に高まったように思われます。ただし、1日に発表されたISM製造業景況感指数は49.4と、節目の50を割り込みました。50を割り込んだとき、過去に利上げをしたことがありません。この点からも、次回のFOMCでの政策判断は大きな注目を集めることになります。

一方、米国株は日柄的にはきわめて重要な局面にきているようです。今年の米国株は年初に1.5%の下落となりましたが、その年の初めの取引日に大きく下落したときには、年末にかけて軟調に推移するケースが少なくありません。その象徴的なケースが1937年と2008年です。両年ともに株価は年初に1.4%下落し、年末までに37%下げています。1937年は、1929年の世界恐慌から8年目でした。恐慌から経済が立ち直り、株価も上昇に向かい始めたところでしたが、そのときにFBRは利上げを敢行しました。これをきっかけに株価は徐々に下落に転じ、最終的には37%もの大幅安になりました。2008年にはリーマンショックがありました。2007年に発覚した、過剰なサブプライムローンの問題が、2008年に入って顕在化し、最終的にリーマンブラザーズが破たんした金融危機です。この時も、年初に1.4%下げ、年初来で37%下落しました。このように、背景は異なるものの、年初に大幅安になったとき、年末まで下落しているわけです。1937年のケースでが、世界恐慌から8年目に株価は高値を付けて急落し、その時の高値を回復するのに8年かかっています。そして、今年はリーマンショックからもうすぐ8年目になります。株価は急落から上下動を繰り返しながら、過去最高値を更新するところまで上昇しました。このまま上昇基調を続けるのか、または市場が気づいていない材料がきっかけとなり、ショック的な下げに見舞われるのか。今年のここまでの株価動向が1937年当時と似ていることを今一度思い出しつつ、材料面や市場動向に目を配りたいと思います。その意味でも、8月の米雇用統計が、これまで堅調に推移してきた株価動向を大きく変えるきっかけになるのか、注目されます。強い内容になり、利上げ観測が高まった場合には、米国株の下落のきっかけになりやすいため要注意です。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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