第104回 J-REITの新規上場時投資ついて【J-REIT投資の考え方】

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第104回 J-REITの新規上場時投資ついて【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は、ボックス圏で推移しています。東証REIT指数は前回連載の8月25日から9月7日まで1,800ポイントから1,850ポイントの間の取引が続いています。長期金利の上昇がJ-REIT価格の下落要因とする報道もありますが、10年国債利回りが8月31日にマイナス0.07%から9月1日にマイナス0.03%に急上昇したにもかかわらずJ-REIT価格への影響はありませんでした。従って10年国債利回りの動向は、少なくとも日銀が9月20日・21日に行う金融政策決定会合まではJ-REIT価格に与える影響は軽微なものと考えられます。
一方で新規上場銘柄の価格は、軟調となる銘柄が続いています。前回連載後に上場した大江戸温泉リート(証券コード3472)は、公募価格93,000円に対して初値は4%安い89,200円、上場日の終値は83,600円となりました。また本日(9月8日)に上場となった、さくら総合リート(証券コード3473)は、公募価格91,000円に対して初値は13%安い79,000円となっています。
分配金利回りで見ても、大江戸温泉リートの第3期(※1)予想分配期金ベースで計算すると9月7日の終値に85,800円に対して5.5%(2,353円×2÷85,800円)、さくら総合リートは第2期(※2)予想分配金ベースで計算すると上場初値79,000円に対して7.2%(2,863円×2÷79,000円)と昨日のJ-REIT利回り平均3.5%に対して極めて高い(価格は安い)状態となっています。

このように直近に上場した2銘柄は、投資家から厳しい評価を受けてスタートすることになりました。ただし過去のJ-REITの上場実績は、厳しい評価だけではありません。この点から今回は、J-REITにおける上場実績と今後の新規上場銘柄の投資ポイントについて記載していきます。
2001年9月にスタートしてからJ-REIT市場は新設合併による上場を除くと69銘柄が上場したことになります。終値がまだ確定していない、さくら総合リートを除くと68銘柄のうち公募価格に対して上場日終値が上回った銘柄は39銘柄になります。騰落率で示すと公募価格に対する上場日終値の単純平均値は3.8%の上昇となっています。総じて見れば、J-REITの新規上場時投資はあまり投資効率の高いものとは言えないことになります。
個別銘柄の価格で示すと、図表1の通り3銘柄が40%以上の上昇となっています。一方で図表2の通り価格下落率が大きい銘柄でも4銘柄は10%程度の下落率です。つまり銘柄の選択次第になりますが、上場日の損益を確定させるという投資では高いリターンが期待でき、損失も一定程度に抑えることが可能です。
今後の銘柄選択という面で見れば、最も上昇した日本ヘルスケア(証券コード3308)や日本ロジスティクスファンド(証券コード8967)が参考になりそうです。具体的には、これまで存在していなかった用途の銘柄が上場した場合は、価格上昇率が高くなるという傾向があります。
図表1には登場していませんが、住居系で最初の上場銘柄となった日本レジデンシャル投資法人やホテル系のジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人(ともに合併により消滅)の上場時価格の上昇率も同時期に上場した他銘柄と比較すると高くなっています。
新規用途の価格上昇率が高くなる要因として、他銘柄との比較が難しいため高い利回りで公募価格が設定されますが、投資家の多くが投資ポートフォリオの分散目的で新規用途銘柄への投資を行うことが考えられます。
この点を言い換えれば、大手企業がスポンサーとなっている銘柄を除き既に存在している用途の銘柄は、新規上場時には投資家の厳しい評価を受けやすいと言えるでしょう。

※1:上場時取得物件の固定資産税・都市計画税が通期で費用化となる時期が第3期であるため、当該決算期の分配金をベースとしている。
※2:第2期に固定資産税・都市計画税が通期で費用化となるが、運用報酬の一部(4,600万円)が第3期以降に発生する可能性がある点には留意が必要。

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コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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