第24回 OPECの減産合意の実効性に注意 【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第24回 OPECの減産合意の実効性に注意 【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

9月20日・21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げが見送られました。FRB関係者が直前まで利上げに関する言及をしていましたが、市場がそれを織り込む動きを見せなかったことで、最終的に今回の利上げは先送りされたと考えられます。FRB関係者の多くが12月までに1回の利上げを予想していますが、FRBは米国株の下落を過度に危惧していると思われ、株価動向次第では利上げはさらに先送りされるかもしれません。そうなれば、低金利バブルのリスクがさらに高まり、むしろ懸念すべき状況になると考えています。

さて、原油市場に動きがありました。OPECがアルジェリアで非公式会合を開き、生産量を日量3,250万~3,300万バレルに制限することで合意したのです。当初合意は困難とみられていただけに、サプライズの結果でした。OPECの現在の生産量は日量3,324万バレルとみられていますが、11月30日にウィーンで定例会合を開き、加盟各国の生産水準について合意を得るとみられています。さらに非加盟の産油国にも増産抑制を求めるとしています。今回の合意では、サウジアラビアが態度を大幅に軟化させました。サウジはこれまで「主要産油国が足並みをそろえるまで減産は行なわない」としてきました。しかし、合意に達した背景には、サウジの事情が見え隠れします。

サウジはこれまで、米国のシェールオイルを標的として増産方針を継続してきましたが、結果的に原油価格を押し下げただけで、自国の収入増にはつながらず、財政も悪化しました。また同国の株価指数が年初来の安値圏にあることや、同国通貨リアル売りの下落、さらにCDSが上昇していることも、背景にあるとみられています。さらに、米国ではいわゆる「9・11」(2011年の同時多発テロ)にサウジ人が関係していたことから、サウジに賠償金を求める法案が議会で通過しており、この支払いへの懸念から、同国による100億ドルの起債が遅延するとの見方もあるのかもしれません。

さて、今回の合意内容については、実際の減産幅や各国の割り当てが不透明です。また減産量もわずかでしかありません。そのうえ、イラクのルアイビ石油相は、同国の現在の生産量がすでに日量470万バレルに達しているとしており、産油量の上限設定にはかなり高いハードルがありそうです。ロシアなどが今回の合意に追随するかも不透明であり、楽観するのは早計のように思います。一方、米国の産油量の動向にも注意が必要です。最近の米国内の石油掘削リグ稼働数は順調に増加しており、5月末の316基から9月には418基にまで回復しました。また産油量も7月初めの日量843万バレルから、9月には同851万バレルに増加しています。この間、WTI原油価格は45ドルを中心に推移しており、この水準が現在の増産・減産の基準になっているように見えます。そのため、原油価格が50ドルに達すればリグ稼働数が増加し、産油量も増えることで、原油価格が抑制されそうです。

産油量が抑制されれば、40ドル割れのリスクは大きく後退しそうですが、一方で価格上昇局面では米国の増産が上値を抑えることになりそうです。結局は45ドルを中心に上下5ドルのレンジでの推移が中心的になるでしょう。それでも、FRBが利上げに慎重であることから、ドルの上値が重くなることがドル建て原油相場の下支えになるでしょう。石油需要は堅調なだけに、原油価格は大きく上昇するには、結局のところ、産油国の行動次第といえそうです。さらに、原油価格動向が米国株に与える影響についても、よく見ておく必要がありそうです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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