マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
米国市場が不安定になっています。大統領選挙の行方が不透明になっていることが最大の理由です。まさに市場の予想外の展開になりつつあるといってよいでしょう。これまでの世論調査から、民主党候補クリントン氏の勝利が確定的かと思われましたが、米連邦捜査局(FBI)がクリントン前国務長官の私用メール問題の捜査を再開したと報じられたことで、事態は急変しています。世論調査の結果は日替わりで両候補が優勢になっており、投票日当日までの報道次第で有権者の心理が揺れ動き、思わぬ事態に発展する可能性がありそうです。金融市場でも警戒感が高まっています。米国株は下げが顕著になり、S&P500は3日時点で2008年の金融危機以来の8日続落となりました。選挙結果が出るまでは不透明感は払しょくされず、株価は不安定な動きになりそうです。
大統領選の結果により、今後の市場動向は大きく揺れそうです。クリントン氏が勝利の場合は、オバマ政権の政策が継承されるため、先行き不透明感は払拭され、株価にはプラスとの見方が多いようです。しかし、クリントン氏勝利の場合でも、FBIの捜査は継続されるでしょう。そのため、大統領就任後にメール問題が最悪の事態に発展し、トランプ氏が大統領に就任した場合以上のインパクトが市場に広がる可能性も否定できません。そのリスクを考慮すれば、クリントン氏が選挙に勝利した場合の方が、市場にリスクが残り続けることになるともいえます。もちろん、トランプ氏が勝利となれば、それはそれでリスクは大いに高まるでしょう。これらのシナリオは全く織り込まれてこなかっただけに、現実のものになれば大変な事態になることは想像に難くありません。いずれにしても、選挙結果いかんにかかわらず、金融市場はリスクオフの状態が続くことになりそうです。
主要市場における、各候補者が勝利した場合のシナリオは以下のようにまとめられるでしょう。米国株式市場では、クリントン氏勝利は織り込み済みで、上値は限定的とみられています。上昇しそうな銘柄として、病院経営・メディケイド(低所得者向け医療保険制度)、エネルギー関連(化石燃料への依存を低下させる政策)が挙げられています。また金融株は成功報酬規制の動きから下落するとみられています。医薬品株も薬価の抑制から売られそうです。トランプ氏勝利では、米国株はすでにバリュエーションが高いため、大きく売られそうです。ちなみに、ブレグジットの際には、S&P500は2日で5.3%下落しましたが、市場では今回はそれ以上のインパクトになるとの見方が多いようです。債券市場では、クリントン氏勝利では投資家のリスク選好により売られて利回りは上昇、トランプ氏勝利ではリスク回避による国債買いで利回り低下が見込まれます。為替市場では、クリントン氏勝利では12月利上げへ関心が移る一方、民主党が議会で多数議席を確保した場合にはドルが上昇する見込みです。トランプ氏勝利ではメキシコペソの下落など、新興国通貨の下落リスクが高まりそうです。コモディティ市場は、クリントン氏勝利では石炭・石油市場に圧力が掛かる一方で、天然ガスが上昇するとみられています。トランプ氏勝利では石炭に恩恵があり、金などもリスクオフで上昇するとみられています。いずれにしても、8日の選挙結果を見極めることになります。リスク管理をしっかりしながら、その日を待ちたいと思います。
江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)
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