第28回 トランプ次期米大統領の政策に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第28回 トランプ次期米大統領の政策に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

11月8日に実施された米大統領選挙では、共和党候補トランプ氏が民主党候補クリントン氏を破り、次期米大統領に就任する見通しとなりました。市場の大方の予想を覆す結果となり、選挙当日の市場では、ダウ平均先物が時間外取引で900ドルを超える下落となるなど、市場は一時混乱しました。しかし、翌日以降の取引では、新政権への期待が不透明感を上回る形で買戻しが入り、その流れが週末まで続いたことから、過去最高値を更新する展開が続いています。当初の市場関係者の見方と全く異なる展開になっているわけですが、それだけ新政権の政策への期待が高いといえるでしょう。

市場が新政権に期待しているのは、財政出動を伴うインフラ投資の拡大です。景気・経済が再び力を取り戻し、米国経済がさらに拡大していくことが期待されているといえるでしょう。このような背景もあり、インフレ関連株や一部のコモディティに買いが入るなど、市場はトランプ大統領誕生をポジティブにとらえています。また、オバマ政権が進めてきた金融規制の緩和にも期待が集まっています。2008年の金融危機により、米国は金融機関への規制を強化しました。金融機関が様々な金融商品を自由に組成・販売したことが、サブプライムローン問題の拡大につながり、ひいては金融危機を引き起こしたとの反省もあり、オバマ政権は金融機関に厳しい規制を掛けてきました。その結果、金融機関の収益が圧迫されるなど、批判も出ていました。しかし、これを緩和すれば、市場が活性化するとの見方は根強く、トランプ氏が選挙期間中に掲げてきた政策に金融規制の緩和が含まれていたこともあり、選挙での勝利を受けて、金融関連株が堅調に推移するなど、その影響が早くも見みられています。

このように、トランプ氏が大統領選で勝利して以降、市場はきわめて強い動きになりましたが、その一方で、財政出動の拡大は将来の財政赤字の拡大につながるとの懸念もあり、この点を指摘する市場関係者も少なくありません。そのため、市場ではトランプ氏の勝利を受けて長期金利が急騰しており、債券価格が急落する事態が起きています。また、金利上昇でドルが上昇しており、ドル指数は2003年以来の高値を付けています。本来、ドル高は米国株にとってネガティブな材料です。今後もドル高が続くようだと、株価の上値が抑えられる可能性があります。いずれにしても、今後はトランプ氏が実際に大統領に就任した後に明確になる具体的な政策の方向性に注目が集まることになるでしょう。その内容次第で今後の市場の方向性が決まるものと考えます。

共和党政権と民主党政権では、共和党政権の方が株価の上昇は抑制される傾向があります。戦後の民主党政権下のダウ平均株価の上昇率の積算は543%ですが、共和党では335%です。また、共和党政権下では、政権1年目のダウ平均株価は平均で1.2%下落しています。特に1月と2月の株価動向は極めて重要で、ここで上昇が確認できないと、そのまま年末まで下落する傾向がかなり鮮明です。そのため、1月20日にトランプ氏が正式に米大統領に就任する前後の株価動向は、来年1年間の株価動向を占ううえで、きわめて重要であるといえます。現在の期待先行ではなく、トランプ氏が選挙戦で掲げていた「減税と財政出動」という、矛盾した政策を市場が今後どのように評価するのか、注目したいと思います。


20161118_emori_graph01.JPG

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧