第32回 米国株の展望【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第32回 米国株の展望【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

本年もよろしくお願いいたします。

年明けの米国株は堅調に始まりました。ダウ平均株価は2万ドルの節目を目前にした動きにありますが、市場関係者の中には「2万ドルは通過点でしかない」との声も聞かれます。確かに、米国株は長期的に見れば、上昇相場に入っているように思われます。米国株には1952年から1969年、1982年から1999年の2回の長期上昇局面が確認されます。いずれも上昇期間は17年です。そして、現在は2013年から始まった上昇サイクルの途中と考えることができるでしょう。過去最高値を更新中ですので、現在の上昇サイクルはまだ始まったばかりといえそうです。ちなみに、今回も17年間上昇し続けるとすれば、米国株の上昇は2030年まで続くことになります。今後も上下動があると思われますが、このトレンドの継続を信じるのであれば、押し目を拾いながら運用成績を引き上げることができそうです。

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昨年11月の米大統領選以降の上昇は、トランプ新政権への期待が背景にあるとの説明が多いようで。しかし、実際には、その前に始まっていた債券価格のピークアウト(国債利回りのボトムアウト)が背景にあったといえます。世界の主要国の国債利回りは昨年7月ごろにはすでに底打ちしていましたので、その時点でその後の利回りおよびインフレ率の上昇の可能性が示唆されていたことになります。市場では、このような動きを「グレートローテーション(大転換)」と呼んでいます。市場環境が大きく変わるときには、このように債券から株式への資金シフトが起き、株価が大きく上昇するきっかけになります。インフレ率や金利上昇が懸念されることもありますが、上昇基調の初動ではむしろこれらは好材料としてとらえるべきでしょう。金利が短期間で急騰しない限り、慌てる必要はなさそうです。

トランプ新政権は1月20日発足しますが、新政権の保護主義への傾斜や対中政策など、不安要素も指摘されていますが、それ以上に重要なことは、経済第一に政策を考える可能性が高いということでしょう。政治家や官僚では困難な経済成長モデルの構築を、ビジネスマンであるトランプ氏が主導するわけです。さらに、その周辺を現場で実績を上げてきた人間で固める人事を進めていることは非常に重要なポイントといえます。期待感はますます高まるところですが、とはいえ、現在の株価水準で積極的に買ってもよいということにならないでしょう。現時点の米国株全体の株価収益率(PER)は歴史的な割高水準にあります。米国株の上昇は、トランプ政権への期待に加え、それまでの自社株買いや配当などの積極的な株主対策の結果ともいえるでしょう。そのため、いまは少し冷静さも必要かと思われます。買いのターゲットとしては、現在の水準から10%から15%下の水準、ダウ平均株価でいえば17,500ドル以下がよいでしょう。ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が開発した「CAPEレシオ」で見ると、過去15年の平均に相当する水準がこのあたりになります。17,500ドル以下であれば心理的な負担を抑えた上で買うことができそうです。このような水準にまで下げた場合には、押し目買いを検討したいところです。ちなみに、トランプ新政権と比較されるレーガン政権時の1年目のダウ平均株価は9%下落しました。しかし、2年目以降は大きく上昇しています。したがって、今年中に10%を超える大きな下げがあれば、2年目以降の上昇に備えてしっかり買っておきたいところです。


江守 哲

エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役

大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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