第110回 2016年の個別銘柄価格動向について【J-REIT投資の考え方】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第110回 2016年の個別銘柄価格動向について【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は12月末に急速に上昇しました。月末の東証REIT指数は1,850ポイントを超え、2016年の年間騰落率は2年ぶりにプラスに転じ6%の上昇となりました。2017年1月に入ってからも昨日(11日)まで1,850ポイント前後で推移しています。

さて今回は、2016年の個別銘柄に関する価格騰落率(※注1)上位3銘柄となった日本アコモデーションファンド投資法人(証券コード3226、以下NAF)、積水ハウス・SIレジデンシャル投資法人(証券コード8973、以下SHSI)、ケネディクス・オフィス投資法人(証券コード8972、以下KRI)の価格動向について記載していきます。2016年の騰落率はNAFで21.7%、SHSIで19.8%、KRIで18.9%となっています。

価格騰落率上位2銘柄はNAF、SHSIの住居特化型銘柄となりました。住居系銘柄はテナントの分散効果が大きいため、収益の安定性が高いという特徴があります。ただし、同様に住居系銘柄の中でも10%を超える下落率を示している銘柄もあるなど、単に住居系銘柄であれば価格が上昇するという単純な傾向は見られません。
住居以外の傾向としては、大手不動産系の会社がスポンサーになっているという点が挙げられます。NAFでは三井不動産、SHSIでは積水ハウスです。このような点からこの2銘柄の価格上昇の背景には、比較的利回りが高い住居系の中でもスポンサーが大手であるという安心感が評価されたことがあると考えられます。
この2銘柄以外にも大手企業がスポンサーとなっている住居系銘柄は2016年の価格上昇率が高くなっています。従って、住居系銘柄は出遅れ感がある大手スポンサー以外の銘柄を除いて価格上昇余地は少ないものと考えられます。

次に価格上昇率3位となったKRIは、中規模のオフィスを中心に投資を行う銘柄です。オフィス賃貸市場に関しては、2018年以降に東京都心部で大規模オフィスの供給が増加するというという懸念材料があります。この点だけを見れば、ケネディクス・オフィス投資法人は大規模オフィスビルの供給で影響を受けにくい中規模オフィスという点が評価されたように見えます。
しかし、住居系と同様に中規模オフィスを主体とする銘柄でも10%を超える下落率を示している銘柄があります。従ってKRIは単に中規模オフィスを投資対象とする点だけが評価されたということにならないと考えられます。
他の中規模オフィスを投資対象とする銘柄とKRIの違いは、物件の取得手法にありそうです。KRIは、12月1日に森ビルとの間で物件の相互取引を行うことを公表しています。具体的には、森ビルから「アーク森ビル」の34階及び35階の共有持分40%を取得し、併せて森ビルに「ビュレックス虎ノ門」を売却するという取引です。
またKRIは、同様の相互取引を11月には平和不動産と3月には日本土地建物との間で行っています。売却物件は、今後の再開発が見込まれているエリアであり、買手の購入意思にKRIが応じたかたちになっています。一方で単純な売却とせず、買手が保有する物件を取得することで競合が激しいオフィスビルの取得をKRIは可能としたのです。
また上記3件の相互取引により売却益27億円超(プレスリリース時点)を計上し、可能な限り内部留保を行うことで今後の分配金安定に寄与するものとなりました。このような点がKRIの価格上昇の背景にあったものと考えられます。
同様な手法を採用するためには、都心部に再開発可能な中規模ビルを保有している必要があります。KRIの上記手法が価格上昇の牽引役となったという認識が広がれば、同様に事例が他銘柄でも実現する可能性があります。従って、同様の事例が実現しそうだと考える投資家であれば、中規模オフィスを投資対象とする銘柄には投資妙味がありそうです。

※注1:2015年末時点で上場していた50銘柄を対象としている。


コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧