第33回 トランプ氏の米大統領就任後の株価動向に注意【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第33回 トランプ氏の米大統領就任後の株価動向に注意【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

トランプ氏が20日に正式に米大統領に就任します。市場はトランプ氏の演説に注目しています。新任の大統領としては支持率が極端に低いとの調査結果もあるようですが、市場の期待は高まっているようです。一方、興味深いデータがあります。過去20年のデータでは、1月20日、23日、24日のダウ平均株価の上昇確率が33.3%ときわめて低い数値になっています(【図表1】参照)。つまり、下落する確率が66.7%ということになります。この3日間の下落の可能性は非常に高いことがわかっています。不思議なめぐりあわせですが、この3日間はまさにトランプ氏の大統領就任に絡んでいます。あたかも、大統領就任を株価下落で迎えるかのようなデータです。もっとも、ここで下げ止まり、その後は上昇するケースが多いことも事実です。当面はこのデータを頭に入れながら、下げ止まりから反発に転じるかを注視することになりそうです。その意味でも、20日の就任式での演説と市場の反応には要注目といえるでしょう。


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これまでトランプラリーで買われてきた株価は、短期的には調整局面に入っています。昨年11月8日の大統領選でのトランプ氏の勝利以降の株価の上昇は、相当の期待感が織り込まれたともいえます。また、16年10月~12月の米金融大手の決算が良好な内容だったにもかかわらず、直近の株価が重くなっているのも、すでに期待感が株価に織り込まれたからでしょう。このように考えると、今後の米国株の動向は、企業業績をさらに大きく改善させるような材料が不可欠ということになります。前回の本欄でも解説したように、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が開発した「CAPEレシオ」はすでに28倍となっており、過去に株価が急落したときと同じ水準にあります。過去に同様の水準だったのは、例えばハイテクバブルの1999年や不動産バブルの2007年などです。このように考えると、もしかすると、今度調整相場が来た時には、想像以上の調整になってしまうリスクもないとはいえないでしょう。また、注目しておきたいのは、米国景気の持続性です。米国では1980年代以降、これまで3回の景気拡大局面がありました。GDP成長率が前年比プラスで推移していた時期を成長・拡大期と定義すると、1980年代には92カ月間の景気拡大がありました。このときは、商業用不動産が活況で、これが成長を支えましたが、最終的にはバブルが弾けて景気拡大は終わりました。一方、1990年代はハイテクバブルがありました。このときには120カ月間の景気拡大が確認されています。そして、2000年代の不動産バブルの際には73カ月間の景気拡大となりました。このように考えると、景気拡大の期間はそれぞれ違いますが、平均すれば95カ月間となります。現在の景気拡大局面は今月ですでに91カ月に達しています。今の景気拡大がさらに伸び、ハイテクバブル並みになるかもしれませんが、それは誰にも分りません。トランプ政権が掲げる政策が奏功すれば、もしかするとあと2年から3年程度、景気拡大が続くかもしれません。しかし、すでに91カ月という長期間にわたり景気拡大が続いていることから、これからは様々なリスクを慎重に見極めながらの対応になるでしょう。悲観的になる必要は全くありませんが、このようなデータを頭に入れたうえで米国株の動向を見ていくことは必要かと思います。深押しの際に買い出動できるよう準備をしながら、市場動向を見ていきたいところです。


江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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