マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
J-REIT価格は、下落基調となっています。東証REIT指数は、2月14日に2ヶ月ぶりに1,800ポイント台を割り込み、昨日(2月22日)まで1,800ポイント前後で推移しています。金融機関を始め多くの国内機関投資家が決算期となる3月末が近づいていますので、投資家の決算数値がほぼ固まる3月中旬まではJ-REIT価格の方向感がない値動きが続きそうです。
さて今回と次回は、前回に概要を記載した2月7日上場の森トラスト・ホテルリート投資法人(証券コード3478、以下MTH)に関し、投資のポイントと留意点について二回に分けて記載して行きます。
MTHに投資を行う上で最大の投資ポイントと考えられる点は、物件取得という外部成長によるプラスの影響が期待できることです。MTHは、増資を行うことで2017年8月期に3,010円としている(※1)1口当たり分配金(以下、単に「分配金」)が増加する可能性が高い銘柄と考えられます。
MTHの業績予想(※1)に拠ると2017年8月期のLTV(※1)は、46.7%程度としています。MTHの財務方針では、当面はLTV50%程度を目処に運用を行うとしていますので、大型物件を取得する場合には、増資が必要になります。
増資を行う場合、借入金比率や取得する物件の利回りが増資前と同一であれば、増資時の価格が増資前の1口当たり出資額を上回るプレミアム増資となると分配金が増加することになります。これはプレミアム増資によって、増資前と比較して発行する投資口が少なくて済むことで、その効果が分配金に及ぶためです。
MTHは、前回の連載でも記載した通りに売出しだけで上場を行いました。売出しの対象となった投資口は1口当たり10万円となっていましたので、昨日(2月22日)の終値147,400円で見れば47%のプレミアがついた状態です。つまりMTHは現状の堅調な価格が続けば、増資による分配金増加が期待できるということになります。
また、今後の物件取得では現状のポートフォリオよりも高い利回りの物件を取得することで、増資による分配金の増加効果が高くなることも期待できます。MTHの上場時ポートフォリオは都市部中心の低い利回りの物件で構成されています。一方で投資方針では、地域比率を定めていない点やスポンサーである森トラストが保有している物件には、都市中心部以外の物件も多く存在します(※2)。
オフィスビル系銘柄や住居系銘柄の場合には、長期的な競争力維持の観点から都市部で物件を取得することが多くなっています。そのため、プレミアム増資を行う時には取得する物件の利回りが既存ポートフォリオより低くなる傾向があり、プレミアム増資効果が弱くなります。一方でMTHの場合は上場時ポートフォリオに都市中心部に所在するスポンサー保有の旗艦物件を組入れていたことで、今後の外部成長では高い利回りの物件を取得できる状態となっているのです。
さらに増資を行うことで、現状の短期借入金比率が是正されることも期待できます。MTHは他のホテル系銘柄と比較しても借入金比率が高い(図表)だけなく、借入金全体に占める短期借入金比率が44%(※3)となっています。J-REIT大半の銘柄が借入金の長期化を図っている中でMTHの短期借入金比率は突出して高い数値です。この点も増資を行うことで、短期借入金の返済や物件取得に併せ、借入金を長期化することが期待できます。
なお、増資の時期については、当然ですが銘柄側が公表するまで外部からは分かりません。同一スポンサーが運営する森トラスト総合リート投資法人(証券コード8961)は、上場後3年半以上経過してから最初の増資を行っています。MTHも上場後、比較的長い期間で増資を行わない、という可能性もあります。
二点目の投資ポイントは、現状では4棟だけでポートフォリオが構成されているため、個別物件の収益変動リスクが極めて高いというマイナス面です。この点については、次回の連載で記載する予定です。
※1:MTH公表の「平成29年2月期及び平成29年8月期の運用状況の予想に関するお知らせ」平成29年2月7日付に拠る数値。なお平成29年8月期としている理由は上場後の運営期間が通常の6ヶ月となる決算期であるため。
※2:詳細は有価証券届出書(平成29年1月4日付)P35など。
※3:本稿執筆時点の借入金額から※1記載の業績予想に記載されている短期借入金の返済予定額10億円を控除して算出。
コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介
<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>
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