第37回 米利上げの影響は軽微【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第37回 米利上げの影響は軽微【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

14・15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利が0.25%引き上げられ、0.75~1.00%とすることが決定されました。政策金利が1%の節目を回復するのはリーマン・ショック直後の08年12月以来、8年3カ月ぶりとなります。市場では今回のFOMCでの利上げはほぼ100%織り込まれていましたので、まさに予想通りの結果となりました。今回の利上げはトランプ政権発足後では初めてとなります。新政権が具体的な政策を打ち出す前の利上げでもあり、当初、利上げは見送られるとみられていましたが、この数週間で、連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長をはじめ、FRB関係者が利上げの可能性について言及を重ねてきたことで、市場に悪影響を与えない形での利上げに成功したといえます。FRBによる金融危機後の緩和策からの金利正常化の動きがいよいよ本格化し始めたといってよいでしょう。

このようなステージに入ってくると、今後の関心は利上げペースに向かうことになります。一部には、17年通年の想定利上げ回数が従来の3回から4回に引き上げられるとの見方もありましたが、FRBは現時点ではそこまで早いペースでの利上げは考えていないようです。トランプ政権の政策の影響や今後の景気動向、インフレや雇用情勢などを考慮したうえで、かなり慎重に利上げを行っていくように思われます。これまでのイエレン議長のスタンスを振り返れば、これが基本的な方針であると考えられます。このような考えが市場に伝わったのか、米国債の利回りは利上げを受けて急低下しています。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは8日ぶりの低水準をつけ、10年債と30年債の利回りも1週間ぶりの低水準となりました。15日に発表された米消費者物価指数は前年同月比で2.7%上昇と高い伸びとなりましたが、FRBが利上げを急がないのであれば、市場金利がどんどん上がっていくことはなさそうです。

一方、雇用情勢についても、失業率は4.7%であり、過去のITバブル時の3.8%やサブプライムローン問題の際の4.4%よりもまだ高い水準にあります。当時と経済環境は異なりますが、金利の引き上げで景気を引締めるというような状況にはないでしょう。まずは金利水準の正常化が先であり、FRB関係者が想定するように、FFレートが19年末に3%に引き上げられる程度のペースがせいぜいでしょう。このようなFRBの市場に対してフレンドリーな金融政策は、米国株の上昇を後押しすると考えられます。そうであれば、米国10年債利回りも年内はせいぜい3%前後までの上昇にとどまるでしょう。ITバブル時には6%台、サブプライムローン問題時には5%台だったことと比較すると、現在の水準や年末の見通しはまだまだ相当低いといえます。また、過去の株価ピーク時には、2年債と10年債の金利スプレッドがプラスになる「逆イールド化」が見られました。しかし、現時点のスプレッドは1.2%のマイナスであり、依然として金利上昇が市場を圧迫するような状況には程遠いといえます。現在は、FRBが金利正常化を急いで、短期金利が押し上げられることで市場が圧迫される状況ではないことから、当面は米国株の上昇が続くと考えられます。現在は歴史的な上昇局面の第2段階に入ったと考えています。4月は上昇しやすい傾向がありますので、月末に向けて押し目があればぜひ逃さないようにしたいところです。

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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