第38回 米国株は長期投資で【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第38回 米国株は長期投資で【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

最近の米国株はやや不安定な動きでした。その背景には、トランプ政権が医療保険制度改革(オバマケア)見直しの撤回に追い込まれたことから、トランプ政権の政策実行力に対する不安が高まり、株価の上値を抑えられたわけです。そのため、長期金利の低下を背景に、利ざや拡大期待が縮小した金融株を中心に売りが広がりました。金融株は、トランプ氏が大統領選で勝利して以降、大幅な上昇を示し、トランプ相場の主軸セクターとみられてきましたが、最近では株価パフォーマンスが低下するなど、少し状況が違ってきているようにも感じます。しかし、今回のオバマケア見直し法案が廃案になったことは、ひとまず無駄な支出がなくなるともいえます。すべてを悪い方に考えると、今回のような市場の動きに翻弄されることになります。一方、トランプ大統領はオバマケア見直しに固執せずに、速やかに法人税減税など税制改革に着手する方針を示しました。この変わり身の早さもすごいのですが、市場ではトランプ政権が掲げた景気刺激策への期待が消えたわけではないとの解釈があるようです。そもそも減税やインフラ投資などのトランプ大統領の主軸となる政策は、本来は景気が悪い時に行うべきものです。そのため、これらの政策が実行されなくても、大きな問題はないわけです。このように考えると、現在の政策面における混乱は、経済には大きな影響はないと考えることもできます。株価変動の本質的な要因を見るようにすれば、今回のような材料に振り回されることはなくなるでしょう。

米国株への投資を考える場合、トランプ大統領の言動に振り回されるようでは、投資判断はできません。株価形成の本質は企業業績です。企業業績が悪化するような政策がとられるようであれば、考え直す必要がありますが、現時点でトランプ政権の政策が企業業績に悪影響を与える可能性はきわめて低いでしょう。そのように考えると、短期的な株価変動要因に振り回されるのは賢明とは言えません。また、これは米連邦準備制度理事会(FRB)の高官の発言についても同じ事が言えます。市場では、イエレン議長を初め、地区連銀の総裁たちの発言を気にしているようですが、重要なのは米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定です。金融政策はすべてFOMCで決定されます。それ以外のときのFRB高官の発言を気にしすぎることは、同様に本質を見失うことにつながるでしょう。

このように考えると、米国株への投資はより大局的に見るべきとの結論に至るでしょう。米国株が上昇し続けている背景には、人口の増加やイノベーションなどが挙げられます。また、個人投資家の多くが株式を保有していることや、企業による配当・自社株買いなどの株価対策も挙げられるでしょう。このような背景もあり、米国株は長期的な上昇基調をつづけています。表にもありますように、1970年以降では、S&P500に投資し、15年間以上保有していれば、すべてのケースでプラスのリターンを得ることができています。また、10年間の保有の場合でも、マイナスのリターンになっているのは1998年および1999年に投資したケースのみです。つまり、米国株全体への投資を長期的に継続すれば、非常に大きな成果を得ることができているわけです。この事実を理解していれば、上記のような目先の材料に振り回されることはなくなります。「米国株への投資は長期で行う」。これが基本的な考え方といえそうです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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