第119回「運用10年を迎えた米国ハイイールド債券ETF」 ETF解体新書

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第119回「運用10年を迎えた米国ハイイールド債券ETF」 ETF解体新書

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。いくら利回りがよくても、名前も聞いたことがない社債を単独で買うのは気が引けるはずです。しかし、そのような社債を幅広く1,000銘柄以上集めれば、個々の社債の信用リスクを分散させることができます。そのようなツールが、「iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)」(当社取扱いETF)です。当該ETFは運用を開始して丸10年を迎えました。当ETFが組み入れるのは、信用格付けがBB以下の「投機的債券」(ジャンク債)です(これを「ハイイールド社債」と名付けたのは金融業界です)。個々のハイイールド社債はスプレッドが大きく、元来プライシングが不透明でした。数多の社債を束にしてETFとして上場させることで、価格の透明性を高めることに成功したのです。HYGは売買高が多いことで知られています。直近3カ月の1日当たりの出来高はおよそ1,100万口となっており、純資産残高は180億ドルを超えます(純資産額では米国上場ETFトップ30の中に入ります)。また、毎月出される分配金も魅力であり、分配金利回りは5.58%となっています(4月20日現在)。ちなみにETFでは元本部分を取り崩して分配金を出すことはありません。

2015年12月に、米国のジャンク債市場のボラティリティが高まった際、HYGの取引量は逆に活発になりました。同年12月11日の1日だけでHYGは約43億ドルが取引され、社債ETFの中では歴代もっとも大きな売買金額となりました(当ETFの流動性の高さが注目されたのでしょう)。HYGは「Markit iBoxx 米ドル建てリキッド・ハイイールド・キャップト指数」との連動を目指します。当該指数は、流動性の高い米ドル建てのハイイールド社債で構成され、リスク分散のため、ひとつの銘柄のウェイトは3%を上限としています。業種別の組入れを見てみましょう。通信24.87%、非景気循環消費13.49%、エネルギー13.41%、景気循環消費12.64%の順となっています。また、保有する社債の残存年数は3-5年がもっとも多く28.86%、次に5-7年21.77%、7-10年16.63%となっています(いずれも4月20日現在)。

HYGの運用成績はこの10年間で、年率+4.81%となっています(市場価格ベース)。年間の経費率も0.50%と低廉で、高コストの「ハイイールド債券ファンド」と比較すると、運用の効率性は一目瞭然でしょう。一部に「HYGは純資産額(規模)が大きくなりすぎでは?」という懸念がありますが、当ETFの純資産残高(180億ドル余り)は、ハイイールド社債のマーケット規模から見れば数パーセント程度に過ぎません。なお、HYGはJDR形式で日本の証券取引所にも上場しており、名称は「iシェアーズ 米国ハイイールド債券ETF」(1361)となっています。こちらは年2回分配金を出しています。最後に、ポートフォリオ構築の観点からは、債券のアセットクラスを「ハイイールド社債ETF」のみで保有するのはお勧めしません。「国債」「地方債」「投資適格社債」のETFを優先させ、サテライト的に「ハイイールド社債」を組み入れるとよいでしょう。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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