第118回 森トラスト総合リート投資法人の物件売却について【J-REIT投資の考え方】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第118回 森トラスト総合リート投資法人の物件売却について【J-REIT投資の考え方】

5月のJ-REIT価格は、方向性のない値動きになっています。東証REIT指数は5月2日に4月20日以来となる1,750ポイントを超える水準に戻り、10日には1,775ポイントまで上昇しましたが、その後は下落に転じました。昨日(24日)は、1,750ポイントを割り込んでいます。
前回の連載(11日)で記載した通り、5月上旬のJ-REIT価格の上昇は株式市場の上昇に対する出遅れ感から生じたものと考えられます。株式市場が10日から下落に転じたことでJ-REIT価格も反落する展開となりました。
なお日本取引所主催で6月29日に東証で開催するセミナーで筆者が講師を行うこととなりました。
http://www.jpx.co.jp/learning/seminar-events/seminar/detail/d1/20170629.html
初心者向けのJ-REIT及びインフラファンドを対象としたセミナーで参加費は無料となっています。募集開始は5月29日からとなっていますが関心のある方はご参加いただければ幸いです。

さて今回は、前述のようにJ-REIT価格が軟調な中で価格が3月上旬以来となる18万円台(24日時点)を回復した森トラスト総合リート投資法人(証券コード8961、以下MTR)について記載していきます。MTRは名称が示す通り、森トラスト(非上場)がスポンサーの多用途に投資する総合型銘柄です。
MTRの価格が上昇した最大の要因は、5月16日に保有物件の「イトーヨーカドー新浦安店」(以下、本物件)の売却を公表したことです。MTRは、16年7月に本物件のテナントであるイトーヨーカ堂が17年7月30日に契約を解約することを公表していました。
同様の退去に伴う売却として、野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3462、以下NMF)が17年6月に売却予定の「イトーヨーカドー東習志野店」という事例があります。NMFの売却価格は7億円弱となり若干の売却益が出ることになっていますが、この物件はNMFが合併によりトップリート投資法人(以下、TOPR)により7億円弱で受入れた(取得した)物件です。TOPRの取得価格は89億円となっていましたので、実質的には本物件で取得価格対比では82億円を超える損失が生じたことになります。
このような事例があったため投資家は物件売却損の発生を懸念し、MTRの価格は16年7月末から18万円を下回る期間が多くなっていました。この懸念は本物件の立地から考えれば杞憂とも言えるものであり、売却益が出る可能性が高いという点を筆者が16年10月に行ったセミナーなどでは説明していました。実際に本物件の売却では、28億円の売却益が発生する見込みとなっています。
MTRは売却益の計上に伴い、一部を内部留保しますが2017年9月期(第31期)の1口当たり分配金は過去最高の4,900円(※1)となる予定です。分配金が大幅に増加するため分配金利回りは4.6%を超えて(24日時点)高くなっていますが、売却益が剥落する2018年3月期(第32期)の予想分配金3,650円を元に利回りを算出しても3.9%を超える利回り(※2)となっています。
MTRの利回りは第32期の業績予想ベースでも市場平均と同程度であり、当面の懸念材料が払拭されたことから割安感は残った状態になっています。また、MTRは本物件の売却により減少した資産規模となる100億円程度の物件取得を比較的早期に進める方針を示しています(※3)。このため、物件取得による分配金の増加も期待できる状況です。

※1:これまでの最高額は2006年9月期23,075円。なおMTRは2014年9月期より投資口を5分割しているため、分割換算すると4,615円となる
※2:3,650円×2÷184,400円(24日終値)
※3:森トラスト総合リート投資法人「第30期決算説明会資料」P18

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧