第42回 米雇用統計後の金利動向に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第42回 米雇用統計後の金利動向に注目【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国株は高値圏で推移しています。米国株式市場は、トランプ大統領の弾劾リスクをほとんど材料視せず、企業業績に素直に反応しており、まさに株価形成の本質に沿った動きといえます。そんな中、ネット通販大手アマゾン・ドット・コムの株価が、初めて1,000ドルの節目を突破しました。1997年の上場時には2ドル以下だった株価は、20年を経て500倍になりました。世の中の変化と、IT技術の進展を機敏にとらえ、急成長してきた同社の株価がこのような成長を見せたことは、今後の米国企業に夢を与えるでしょう。今回の上昇で、アマゾン株の時価総額は4,700億ドルを超え、米国企業ではアップル、グーグル親会社のアルファベット、マイクロソフトに次ぐ4位となりました。これらの時代をけん引する、企業の株式への投資は今後ますます拡大しそうです。上記の企業に、フェイスブックを加えた5社の時価総額のS&P500に占める割合は13%を超えており、株式市場をもけん引する主要企業といえます。米国株式市場は、今後もこれらの企業を中心に展開されるものと思われ、投資マネーがますます集中する可能性があるでしょう。

一方、今後の市場の関心は、米利上げに移るものと思われます。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げはほぼ確実視されていますが、問題はその後の利上げペースでしょう。5月2・3日開催のFOMCの議事要旨では、FRBが利上げに慎重な姿勢を示していたことが判明しました。議事要旨によると、政策決定者たちは最近の景気後退が一時的なものであるとの証拠が見つかるまでは、引き締め政策を取らないことで一致しました。これは、今後の利上げの判断は、慎重に行われることを意味します。また、FRBが保有する資産圧縮については、年内に開始することで一致したが、その場合には利上げが中断される可能性が高そうです。ブレイナードFRB理事は、「1~3月期の経済成長の減速は消費の弱さが要因だったが、住宅投資や設備投資などは堅調」と指摘し、「雇用の改善が続き、賃金が伸びる」ことから、「消費の弱さは長続きしない」としています。その一方で、物価上昇率がFRBの目標である2%に達していないことから、「改善の遅れは懸念要因」とし、物価が改善しなければ利上げを見直す可能性を示唆しています。また、FRBが保有する資産の圧縮については、「毎月少しずつ、予見可能な形で淡々と削減していくべき」とし、「満期償還から再投資する額に上限を設け、緩やかに再投資額を減らしていくのが望ましい」としています。

これらから、FRBは利上げよりも資産圧縮を優先させる姿勢がうかがえます。4月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.7%上昇と、前月の1.9%上昇から鈍化しており、伸び幅は昨年12月の1.6%上昇以来の小ささでした。インフレ率の伸びは前年同月比で3カ月連続で減速しており、このままでは年末までの利上げ機運は盛り上がりにくいでしょう。金利の低迷は、企業のコスト抑制につながりますので、現在の株式市場においてはポジティブに作用するでしょう。資産圧縮が奏功すれば、金利の上昇も抑制され、米国株にはますます好都合といえそうです。金利抑制でドル安基調が続けば、これも株価をサポートするでしょう。3月までは金利上昇と株価上昇が併存してきましたが、いまは金利の低位安定が、好材料と捉えられています。このような市場の見方の変化にも注目しておきたいところです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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