第46回 VIXの低位停滞は将来の株価上昇のサイン【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

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第46回 VIXの低位停滞は将来の株価上昇のサイン【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国の長期金利が低下しています。市場では、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて、利上げが継続されるとの見方から金利が上昇していました。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が、7月12・13日の議会証言で、これまでの積極的な利上げを示唆する発言を取り下げたことが、金利低下につながっています。イエレン議長は、「経済成長と物価安定に向けて、今後数年にわたり、緩やかな利上げが適切」と発言しました。これ自体は、これまでの発言を踏襲するものですが、「ただし、弱さが目立つ物価動向を注視し、物価上昇の減速が長引けば計画を見直す」とした点に市場は注目しました。一方、FRBが保有する約4.5兆ドルの資産に関しては、「資産圧縮は比較的早期に取り組む」として、年内の圧縮開始を示唆しました。景気見通しは、「年初に減速した米国景気は4~6月期に持ち直した」とし、「米国景気は今後2~3年、緩やかに拡大する」としました。現在、米国景気は6月末時点で96カ月間の拡大を続けています。過去3回の景気拡大局面の平均が95カ月ですから、すでに過去平均に達しています。しかし、イエレン議長が指摘するようにあと2年程度の景気拡大が続けば、ハイテクバブル時の120カ月に達することも想定されます。

利上げに関しては、インフレ率が鈍化しているため、正当化されにくいでしょう。現状の原油安が続けば、原油価格との相関が高い米消費者物価指数は上昇しづらく、年内の利上げは難しいと考えられます。一方、FRBが保有する資産については、年内の圧縮開始がFRBの本音であり、早ければ9月のFOMCで決定され、新しい財政年度が始まる10月から開始される可能性があります。そこで市場の反応を見たうえで、問題がなければ、12月の利上げ決定というのがもっともタカ派的なシナリオとなるでしょう。一方、過去の景気拡大と株価の関係をみると、19年中ごろまで株価が上昇する可能性がありそうです。金利があまり上昇しない中で、企業業績が拡大しやすい局面が続くことになり、現時点で割高と判断される株価水準も正当化されることになりそうです。

米国の主要企業の4~6月期決算の発表が始まりました。S&P500の第2四半期の増益率は8%程度になる見通しです。きわめて安定的な業績の伸びといえます。第2四半期の収益の伸びの多くはエネルギーセクターが寄与する見通しで、いわゆる「FAANG銘柄」は6%増益と全体の伸びを押し下げるとみられています。特にアマゾンの1株当たり利益は20%減少するとみられており、アルファベットも2%減が見込まれています。しかし、ネットフリックスは73%増、アップルは11%増、フェイスブックは16%増が見込まれています。アマゾンについては、16年後半以降に配達時間短縮のための倉庫整備に、追加投資を行ったことが利益を圧迫したため、第3四半期以降にはその影響は緩和される見通しです。今年のナスダック指数の変動パターンは、年後半に2割を超える上昇になることを示唆しています。このような好調な業績と、過去の変動パターンから、ハイテク株を中心に米国株に対して強気な見方を変える必要はないと考えています。また、最近はVIXが低位で推移していますが、これは株価が将来的に大きく上昇する前に起きる現象です。過去の株価急伸時のVIXの動きを確認し、将来的な米国株の上昇がこれから始まる可能性があることを確認しておきたいところです。

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江守 哲

エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。

著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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