第47回 ハイテク株の夏場の押し目は限定的【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第47回 ハイテク株の夏場の押し目は限定的【ズバリ!江守哲の米国市場の"いま"】

米国の主要企業の4~6月期決算の発表が佳境に入っています。好調な企業業績を背景に、主要株価指数は軒並み過去最高値更新を続けており、直近ではダウ平均株価の上昇基調がきわめて顕著になっています。米主要企業の純利益は前年同期比10%増と2ケタ増益になる見通しです。S&P500構成銘柄のうち、約3分の2以上がすでに第2四半期決算を発表しましたが、そのうち7割を超える企業の利益が市場予想を上回っています。通常の四半期決算では、利益が市場予想を上回る割合は64%ですので、今回の業績がいかに良いかがわかります。このような堅調な企業決算を背景に、高いバリュエーションに対する投資家の懸念は緩和されるものと思われます。1年後の業績見通しに基づくS&P500企業の株価収益率(PER)は約18倍と予想されており、10年平均の14倍を上回っています。これだけを見れば、かなり割高のように見えますが、S&P500の年間ペースでも2ケタの増益率が見込まれています。株価の割高感は徐々に薄れていくでしょう。

現在の米国株は米長期金利の低下とドル安に支えられていると考えられます。6月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.4%上昇と、前月の1.5%上昇から低下し、4カ月連続で伸びが鈍化しました。上昇幅は昨年9月の1.4%上昇以来の小ささでした。食料品とエネルギーを除いたコア指数の伸びは同1.5%上昇で、前月と同水準でした。PCE物価指数は、2月に同2.2%上昇した後、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を下回っています。失業率の低下と雇用の拡大はインフレ上昇にはつながっておらず、FRBは物価動向を「注視する」と警戒しています。物価の伸び悩みが続けば、年内あと1回の利上げシナリオが後退することになります。市場における12月の利上げ確率は5割を下回っており、利上げ機運は高まっていません。9月19・20日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが見送られるでしょう。当面は景気が弱過ぎず、強過ぎずに緩やかな株高・債券高が続く「ゴルディロックス相場」が継続しそうです。トランプ政権の不安定を背景に、減税とインフラ支出拡大の政策推進への期待が低下しているものの、米国株は堅調さを維持しており、株式市場はもはやトランプ政権を懸念材料とみていないといえそうです。

一方で、夏場の株安を予想する向きも少なくありません。現在の株価水準が高いことや、最近の急ピッチの上昇に加え、季節的に下げやすいことがその理由です。ダウ平均株価の8月は12カ月の中では10番目に弱い月で、過去37回が上昇、29回が下落、平均騰落率はマイナス0.2%となっています。また、9月は12カ月の中で最も弱い月で、過去26回が上昇、40回が下落、平均騰落率はマイナス0.8%となっています。このように、この夏の季節は株価が下げやすい傾向があります。一方、いまはハイテク株主導の強気相場の最中にあると考えられますので、ハイテクバブルに向かった1990年代後半との比較が参考になるでしょう。ナスダック指数がバブルに向かっていく途中の8月と9月のパフォーマンスは、98年こそ大きく下げていますが、それ以外は上昇しています。また、98年は8月と9月は下げましたが、年末に向けて大幅高になっています。このように考えると、8月に下げることがあれば、それは格好の押し目買いの好機になるでしょう。したがって、いまは高値と判断して慌てて売らずに、押し目で買い増すくらいのスタンスでいるのが良いように思われます。

20170804_emori_graph01.png

江守 哲

エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役

大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

マネックスからのご留意事項

「特集1」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧